先週、伏兵レッツゴードンキが眩惑的なレース運びで優勝し、“波乱”で幕が開けた今年のクラシック戦線。
長年競馬を見ていると、「牝馬で荒れた時は、牡馬は人気サイドで収まる」(逆もまたしかり)というのが、クラシックの鉄則であるように思えてならないのだが*1、先週のレースのあまりのインパクトの強さゆえに、馬券的にはどうしても、ダノンリバティ*2とか、ミュゼエイリアン*3といった方に何となく手が伸びてしまった結果、今年の皐月賞は実に残念な結果に終わってしまった。
とはいえ、今週も、勝った馬は、レース前に話題になっていた「無敗馬」(サトノクラウン、キタサンブラック)ではなく、今年こそ、の期待がかかっていたディープインパクト産駒でもなかった。
3番人気での優勝、とはいえ、母系を見ると、曾祖母・ダイナカール*4から、祖母・エアグルーヴ、母・アドマイヤグルーヴ、と大きな牝馬タイトルを取り続けてきた馬の系譜に連なる血統馬だけに、今考えると、今回1番人気にならなかったのが不思議なくらい。
まだ馬に幼さがあるのか、最後のコーナーを回ったあたりで、突然外側に大きく膨らみ、ヒヤッとさせられるところもあったのだが*5、直線で前を向けば、ほぼこの馬の独壇場で、まるで周りの馬たちが止まってしまったように見えるくらいの“次元の違う脚”*6を示し、1.5馬身差、という着差以上の強さを感じさせた。
おそらく、次戦以降、しばらくは「1番人気」の座を譲ることはないだろう。
次は舞台を替えてダービー、ということになるが、元々、新馬戦から500万下、そして2着に入った共同通信杯まで、東京コースでの走りの良さが光っていた馬だし*7、父がキングカメハメハ、母系三代でオークス2勝、エリザベス女王杯2勝、という血統なら、クラシックディスタンスでタイトルを取れない理由もない。
唯一、死角らしきものを挙げるとすれば、今日のレースで垣間見えたような「爆発」が悪い方に働くことくらいだろうが、これだけの完璧な要素を備えた馬の場合、逆に、それくらいのスリルがないと、競馬が面白くなくなってしまう。
常に有力視されながらも、春の「最初の一冠」だけには縁がなかったダイナカール一族*8の中で、初めて最初の一冠を制し、「3冠」の可能性を掴んだだけに、個人的には、夏くらいまでは“神話”になる可能性を残しておいてほしいな、と思うのであるが、果たしてどうなるか。
まずは、ケガなく本番までたどり着いてくれることを、願うのみである。
*1:もっとも、この点については、きちんと毎年統計をとっているわけではないので、あくまで感覚的なものが大きい。
*2:岩田騎手騎乗。キングカメハメハ産駒、ということで中山コースとの相性も悪くなさそうだった。結局、勝ったのは同じ父親のもう一頭だったわけだが・・・。
*3:スクリーンヒーロー産駒、という渋い血統の上に、ここ数年だけで、一気に所有馬を増やしているミュゼプラチナムのオーナーが馬主、という話題性もあった。
*4:個人的には、「エアグルーヴの母」という印象が強かったこの馬が既に血統表の右の隅っこの方に出てくるような存在になってしまった、というところに隔世の感がある・・・。
*5:この騎乗で、M・デムーロ騎手は4日間の騎乗停止処分を受けることになってしまったが、それで済んだのがラッキー、と思えるくらいひどい斜行だった。
*6:このレースのドゥラメンテの上がり3ハロンは33秒9であり、これがレース中唯一の33秒台であった。
*7:未勝利戦と、500万下特別のセントポーリア賞で付けた着差の合計は合計11馬身。負けた2戦も0.1差の2着、と、ほぼ穴のない走りを見せている。
*8:ダイナカールは桜花賞3着、エアグルーヴは熱発で出走回避、アドマイヤグルーブは1番人気で臨んで3着、と、3歳時にビッグタイトルを取っている血統であるにもかかわらず、何故か、最初の一冠にだけは縁がなかった。