伝説は、そう簡単には生まれない。

レースの「看板」となるにふさわしい前哨戦の勝ち馬(阪神大賞典ゴールドシップ日経賞ウインバリアシオン大阪杯キズナ)が3頭もずらっと顔を揃えて、古馬戦線においては久しぶりに本格的な“ライバル対決”が期待された今年の春の天皇賞

様々な意味で「伝説」を作ったオルフェーヴルがターフを去った直後の大レース。
今回「主役」に推しだされた3頭のいずれの馬も、何かしらオルフェとの絡みで“伝説”となる素地を持っているだけに*1、現代においてはあまりに長い3200m、3分超の時間も苦にならないくらい興味深々でレースを眺めたのだが・・・

結果は、意外や意外、前年の覇者とはいえ、昨年の勝利以降、決して芳しい実績を残していなかったフェノーメノが、コース適性を見事に活かしてV2達成。

一方、「主役」となるはずだった3頭は、ウインバリアシオンこそクビ差の2着に食い込んだものの、キズナは武騎手の必死の追い込みも実らず4着、ゴールドシップに至ってはスタートのハプニング的出遅れを最後まで取り戻せないまま、7着惨敗、という結果となってしまった。

キズナに関しては、元々、父・ディープインパクト産駒が、このレベルの長距離G1レースで必ずしも実績を残していない、という点が戦前から指摘されていて*2、レース前に断トツに人気を背負っているのを見た時には、内心しめしめ、と思ったくらいだから、この結果も分からないでもない*3

しかし、1世代上の“たんこぶ”がいなくなり、晴れて主役になれるはずだったゴールドシップの方はどうだ・・・。

あの名手・内田博幸騎手ですら、ゲートから出すのに苦労した馬だけに、ウィリアムズ騎手の直前乗り替わり、という状況はさすがに厳しかったのかもしれない*4

だが、同じステイゴールド産駒のフェノーメノの堂々とした勝ちっぷりを目の前で見せられてしまうと、“血の底力”でもう少し何とかならなかったのか・・・という思いは強い。

ゲートで吠えて大きく出遅れ、でも、最後方から追走し、京都の長い下り坂で一気にまくって、一気に先頭に躍り出る・・・。
そんなレースをやってのけていれば、たとえ勝てなかったとしても、ゴールドシップは新たな「伝説」になれただろうに。

ディープやオルフェのような、極端な競馬をしてもなお、大レースで勝ち負けに名を刻める、という馬は、そうそう出てくるものではないし、だからこそ彼らは「伝説」の域に達することができた。そして、一つの伝説が終わった後すぐに、それを継承できる馬が現れるほど世の中は甘くない。

淀の大舞台での激戦を眺めながら、それを痛いほど思い知らされた関係者は多かったのではなかろうか・・・。

*1:ゴールドシップは、ステイゴールド×メジロマックイーンの黄金血統を受け継ぎ、かつ3歳2冠+有馬記念宝塚記念、という堂々の実績。ウインバリアシオンはクラシック戦線でオルフェと覇権を争った好敵手、さらにキズナ凱旋門賞でオルフェとともに「日本代表」の看板を背負った4歳世代最強のスター。いずれも主役を張るにふさわしい実績は備えていた。

*2:なんといっても長距離の舞台になると、ステイゴールド>>(越えられない壁)>>ハーツクライ>>>>>>>ディープインパクト、という序列が既に形成されてしまっている感がある。

*3:結論から言えば、武豊騎手が、少し大事に乗り過ぎた、ということになってしまうのかもしれないが、3000m以上の距離での実績がない馬が恥ずかしくないレースをしようと思ったら、ああいう位置取りでじわじわ追走して、最後の脚にかける、といった戦略になるのも理解はできる。

*4:前走で癖を掴んだかに見えた岩田騎手が、前週、いつもの・・・をやらかして騎乗停止になってしまったのが陣営にとっては痛恨だったか。

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