清々しい決勝戦。

大雪で史上初の延期となった全国高校サッカーの決勝戦

番組編成を急きょ組み替えたためか、せっかくの決勝なのに「録画」でまさかの“CM挿入”(しかもCM直後に得点シーン)という興味を削ぐような中継に終始したテレビ局には、がっかりさせられたのだが、試合の中身の方は素晴らしかった。

昨年の決勝戦*1が「静」の決勝だったとすれば、今年は「動」という言葉がふさわしい展開だったといえるだろう。

どちらも休養十分で、気分もいったんリセットして臨めた試合だったから、ということもあるのかもしれないが、どちらのチームも持ち味を存分に発揮して躍動していた。

特に、京都橘高校は、仙頭選手、小屋松選手の2トップを中心に、ドリブルとパスを絡め、フィールド上でボールを自在に動かす美しい攻撃が冴えわたっていて、その流れ通りに前半41分に先制。そして、追いつかれた後の後半19分に、流れの中から仙頭選手が見事な勝ち越しゴールを決めたシーンなどは、まさに京都橘の“真骨頂”が発揮された、といっても過言ではない瞬間だった。

一方、鵬翔高校も、押され気味ながら、得意のセットプレーから確実に得点。
後半の頭から投入されたエース・中濱選手は得点にこそ絡めなかったものの、随所にスピードあふれる個人技で“片鱗”を見せていたし、日高選手の強烈な左足のロングキックや、1年生の北村選手の獅子奮迅の働き等、ギリギリのところでの執念が、残り5分になろうか、というところでのPKにつながったのだろうと思う。

結局、延長戦に入り、パワープレーに持ち込んでもなお、最後のトドメを刺せなかった京都橘高校がPK合戦で敗れる、という結果になったが*2、最後まで持ち味を発揮して優勝できた鵬翔はもちろん、京都橘にとっても「負けてなお強し」という印象を強く残せたから、これで良かったのではなかろうか。

勝戦に出場していた両チームの選手の中には、1年生、2年生も結構いたようだが、以前ご紹介したような近年の“戦国”ぶり*3に鑑みれば、来年、いずれのチームも国立競技場まで戻ってこれる保証は全くないし*4、それ以前に全国の舞台に出てくることも難しい、ということだってありうる。

ただ、2013年、この両チームが、ハプニングを乗り越え、「初」の栄誉をかけて大舞台で好勝負を演じた、ということは、永遠に歴史と多くの人々の記憶の中に残るわけで・・・。

今となっては、「延期」という判断が、実に英断だった、と思わずにはいられないのである*5

*1:開始直後に四中工が先制した後、後半ロスタイムに市船のキャプテン・和泉選手が同点ゴール。さらに延長戦で和泉選手が決勝ゴールをたたき込む、という劇的な展開。

*2:これまで今大会、PK合戦で負けなしの鵬翔高校を相手に110分で決着を付けられなかった時点で、京都側の応援団としては、この結果を覚悟すべきだったのだろう。鵬翔の各選手のキックは、(後半39分に決めた矢野選手のそれも含め)迷いなく強く、ゴールを守る浅田卓人選手の存在感は、テレビ画面を通じても圧倒的だった(何試合か見ていたが、顔色一つ変えずにかなり難しいシュートをセービングしている姿が印象的。安定感では今大会の各校のGKの中でも抜群だったように思う)。1人目、満を持して送り出されたはずの京都橘・仙頭選手が外したのも、たぶんにその辺のプレッシャーが影響していたことだろう(結果的には2人目以降、皆決めたのだけど)。

*3:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20130105/1358016805参照。

*4:現に2年生を擁して、「来年こそは・・・」と言われた四日市中央工も、今年はあっさりと散った。

*5:仮にあのまま決勝が行われずに「両校優勝」となってしまっていたら、この名勝負の記録、記憶は決して生まれなかっただろうし、かといって雪の中、試合を強行していたら、ここまでクリーンな試合になったかどうか分からない。

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