「日米通算4000安打」フィーバーと一抹の寂しさ。

NYヤンキースイチロー選手が、今か今かと待たれていた日米通算4000本安打をようやく達成した。
日本で1278本。そして、メジャーリーグで、2001年シーズンから足かけ13年かけて積み重ねた数字は2722本。

「ヒット数の割にはチームの勝利に貢献してないんじゃないか」とかなんとか、いろいろな雑音はあるところだけれど、自分は、メジャーに渡った日本人選手の中でも、野茂英雄投手とイチロー選手は、“パイオニア”という意味では完全に「別格」だと思っていて*1、彼らが残した実績は、好き嫌いを超えて称賛に値する、と思っているので、今回の「4000本安打」のニュースも、素直に喜ばずにはいられない。

ただ、ちょっと気になったのは、これまでの「節目」に際しての球場の、そしてヤンキースというチームの雰囲気(あくまでテレビ越しに見た印象と本人の試合後のインタビュー等から想像したものに過ぎないが)である。

元々“ベースボールの本家”として極めて高いプライドを保ち続けている米国において、「日米通算」の数字、というのは、本来そんなに重視されていなかったはずで、これまで、日米通算2000本安打を達成した時(2004年)も、3000本安打達成(2008年)の時も、「メジャーリーグ通算」の節目と比べると、かなり地味な取り上げられ方だったと記憶している。

筆者自身、渡米して10年経ってもなお、コンスタントに200安打以上打ち続けていた当時のイチロー選手の姿を見て、「日本の数字を足して無理やりお祝いしなくても、いずれメジャーでの“正味”の数字だけで同じ節目を越えていくんだから」と、大騒ぎする日本のメディアの報道を斜め読みしながら、思っていたものだった。

だが、気が付けば、「一日3本〜4本」が珍しくなかったイチロー選手の安打数は、減少カーブを辿り始め、今は1試合で1本出るかどうか、というレベルになってしまっている。
そもそも、昨年のヤンキース移籍後は、コンスタントに試合に出る機会すら、確保されていると言えるか微妙な状況なわけで、一番脂がのっていた時期のイチロー選手の凄さを散々思い知らされてきたファンや関係者の中には、「もうそろそろ、なのかなぁ」という思いを抱いている方も多いことだろう。

そして、もしかしたらこれが、イチロー選手のメジャーリーグにおける最後の“節目”になるかもしれない、という差し迫った感覚が、今回の不思議な空気につながった・・・と思うのは、うがった見方に尽きるだろうか?


イチロー選手がかねがね言っているように、別に40歳を超えたから、といって、それによって一気に力が落ちることになるとは考えにくいし、自分はメジャーでの通算記録だけで、ピート・ローズを超えるような活躍をこの先も期待するつもりではあるが、どんな超一流のアスリートでも、じわじわと力が落ち、最後は、刀折れ、矢は尽き・・・という状況に陥る可能性を抱えていることは否定できない。

これまで何度も自分のバットで窮地を切り抜けてきた印象があるイチロー選手のこと。
願わくば、せめてメジャー通算3000本安打達成の瞬間くらいまでは、現役で活躍し続けてほしい。そして、時々はこれまでと同じように「これ以上は無理、無理」と言っている人々を、全力で見返すような派手な活躍を見せてほしい、とは思っているのだけれど・・・。

今回の「節目」が、イチロー選手にとって、野球人生最後の「節目」とならないことを、今はただ願うのみである。

*1:厳密に言えば、野手としてのパイオニアイチロー新庄剛志選手で、実績はともかくインパクトとしては新庄選手にも侮れないものはあったと思うのだが(しかもイチローがやってくる10年以上前に、ニューヨークを本拠地とするチームで地元ファンを沸かせた実績もある)、一応ここではおいて置く。

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