今年はとにかくプロ野球の世界で大物選手の引退が相次いでいる、という印象が強くて、先月にもそのネタで記事を書いた*1ばかりだったのだが、ここにきて、さらに衝撃的なニュースが紙面を飾った。
「プロ野球巨人は23日、次期監督に高橋由伸打撃コーチ兼外野手(40)が就任すると発表した。現役引退も同時に発表された。」(日本経済新聞2015年10月24日付朝刊・第37面)
40歳の大台に足を踏み入れたばかり、という若さであの“伝統ある巨人軍”の監督に就任する、ということも、それはそれで大ニュースなのだが、それ以上に、代打中心ながら今季も勝負強い打撃センスを発揮しており、まだまだ現役を続行すると思われていた高橋選手が、こうもあっさりユニフォームを脱いでしまったことに、自分は大きな衝撃を受けた。
そして、朝、この記事を見た後には、同じ球団に所属する井端弘和選手の“道連れ引退”のニュースまで飛び込んでくる・・・。
高橋選手にしても、井端選手にしても、通算成績を見ると“一流”と言って過言ではない結果を残しているにもかかわらず、自分の記憶に決定的な印象を残したシーン、というのは、あまり出てこない。
巨人にしても、井端選手が現役生活のほとんどを過ごした中日球団にしても、自分の贔屓からは一番遠いところにあるチームだから、印象に残っていないのも当然、と言われてしまうかもしれないが、同じ敵チームの選手でも、松井秀喜選手だとか、中村紀洋選手だとかになってくると、鮮烈なシーンは数多く出てくるし、通算では1000本安打に達していないような選手でも、あるシーズンに限っては強烈な印象を残していることは、決して珍しいことではない。
だが、高橋選手は通算1819試合出場、1753安打、321本塁打、986打点、という成績を残していながら、打撃部門でのタイトルはなし。
ベストナインにしても、実働18年の間にたったの2度しか選出されていない。
また井端選手に至っては、通算1896試合出場、名球会入りも目前の1912本の安打数を残しているのだが、同じく打撃部門のタイトルはなく、数字を見ると、「そんなにヒット打ってたの?」という印象の方がむしろ強い*2。
井端選手の場合、ドラフト5位指名からレギュラーの座を奪い取り、監督、球団との確執の中で、最後は巨人に移籍する、というドラマがあったから、まだ、このタイミングでの引退も腑に落ちるところはあるのだけれど*3、高橋選手の場合、鳴り物入りで入団した時の“優等生”ぶりに始まり、絵にかいたような“読売の紳士”としての振る舞いを続けたまま、小さくまとまっていつの間にかフェイドアウトしてしまった、という感が強い。
度重なる負傷が選手として爆発する機会を失わせてしまった、と言ってしまえばそれまでなのだが、六大学時代の“別格”ぶりを目にしていた者としては、どうしても寂しい気持ちは残るし、DHのあるパ・リーグに移籍してでも、現役にこだわって「最後に一花」というところを見せてほしかった、という思いもある。
長年チームの顔だった原監督がCSで散って退任し、さらに球団が野球賭博事件で揺れる中、
「『清新なイメージ』の生え抜きスターの擁立を急ぎ、傷ついたイメージの回復を一刻も早く図りたかった」(同上)
という大人の事情に、「現役続行」という自分の思いをあっさり譲ってしまうところが、優等生の優等生たるゆえんなのかもしれないが、現役引退、即、監督就任、というパターンでうまく行ったケース、というのを自分はほとんど知らないだけに、ここで示した潔さが、かえって仇にならないことを、今は願うのみである。
*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20150926/1443367713
*2:中日時代のアライバの二遊間には、随分痛い目にあわされているので、“守備の人”という印象は強かったのだが・・・。
*3:とはいえ、ここまで来たら2000本の大台を狙って欲しかったな、という思いはある。