潔く散った青。

W杯グループリーグC組の最終戦
大方の視聴者の予想通り、日本代表は、今大会屈指の強豪、コロンビアの前に叩きのめされて散った。

もっとも、自分の中には、1-4、というスコアの見た目よりは、遥かに“いい試合”だったな、という印象が残っている。
特に前半。

後がない日本は、これまで2試合とは別人のように、素早くボールを回し、縦へ縦へと攻めたてる。
アンラッキーな今野選手のPK献上で前半17分に痛恨の失点を喫した後も、攻めのスピード感は変わらず、得点の香りはいつになく強く漂っていた。
そして、前半ロスタイム、ついに岡崎選手のの爽快ヘッドで同点。

コロンビアが先発メンバーを8人チェンジしたこともあって、連携にしても前線の決定力にしても、今一つの出来にとどまっていた*1ことには留意しておく必要があるし、日本側の攻撃の最後の詰めが相変わらずな感じだったのも確かだが*2、それでも、初出場したボランチの青山選手の前線へのフィードが再三にわたって好機を演出していたし、香川選手の出来も今大会の中では一番。好調な両サイドバックの攻め上がりや、久々に「縦」への早さを発揮した岡崎選手の動きと相まって、実にリズミカルなボール回しを演出していた。

前半45分でのボール保持率57%、シュート数は相手の4倍の12本、という数字に、全てを吹っ切った感があった、この日の日本の良さが、如実に表れていたといえるだろう。
見ている側としても、今大会3試合目、180分以上フラストレーションを溜めこんだ後に、ようやく、「これがやりたかったことなんだろうな・・・」というサッカーに触れることができて、ほっと胸をなでおろしたところはあった。

コロンビアが後半の開始早々から、ハメス・ロドリゲス選手、という今大会屈指の背番号10を投入したことで、微かに湧き上がった日本国民の夢が、一瞬で潰えてしまったことは否定できない。

前半、よく機能していたように見えた縦攻撃(特に青山選手を起点とした香川、岡崎両選手へのホットライン)も、カウンターにうまく対処していたように見えた吉田、今野、長谷部といった守備側の選手達の踏ん張りも、ギリシャコートジボワールに1点をリードして前半を折り返す、という他会場のサプライズ的なアシストも、一人の天才の前では、あまりに無力で、前半、ピッチ上ではほぼ死んでいたいたマルティネス選手を生き返らせる2ゴールをアシストしたかと思えば*3、後半終了間際には、自分で持ち込んでフェイント→ループシュート、と、後半はハメス・ロドリゲス選手一人に、完全にゲームを支配されてしまっていた*4

2点目を取られてからは、まだ“一進一退”と形容できるような奮闘を見せていた選手たちも、3点目を取られた後半37分以降は完全に沈黙。
史上最高齢選手である英雄GK・モンドラゴン選手を交代で投入するなど、完全にガラコンサートムードに入った相手チームに一矢報いる機会すら得られなかったわけで*5、それだけ大きな「世界の一流チームとの差」を見せつけられてしまったことも間違いない事実である。

ただ、決してそれほどの力量差があるとは思えなかった相手に、やろうとしていたことを十分表現できないまま、生煮えの不完全燃焼で90分を終えることになってしまった過去2試合に比べれば、45分+ちょっとの間だけでも、輝きを見せることができたこの試合の方が日本らしかったと思うし、それだけ果敢に攻めたことが、天才ハメスの登場と、彼の再三の美技を引き出すことにつながったわけだから、一サッカーファンとしては、これで良かったんだと思っている。


おそらく、これから、自虐的な日本メディアと、それに追従する人々(苦笑)が、散々「過去4年間の総括」と「やっぱり日本(&日本の選手)はダメなんだ」的なバッシングを始めることだろう。

だけど、これまでの間に、スペインやイングランドが早々と散り、そんなに悪いところがあったわけでもないイタリアですら、コスタリカ*6に敗れてグループリーグで散っていること、そして何より、日本相手にひたすら専守防衛に徹するほかなかったギリシャが、派手なカウンターと幸運なPKで、あのコートジボワールを下してベスト16に進んだ、ということから分かるように*7、この種の大会での勝ち負けや戦績、というのは、ちょっとした勝負の綾や勢い等々に左右される“紙一重”のものでしかない*8

だから、今大会、グループリーグで敗退を余儀なくされたからといって、2011年アジアカップの栄光や、コンフェデ・イタリア戦での激闘、欧州遠征でのベルギー戦勝利、といった足跡が全否定されることにはならないし、ましてや、欧州のビッグクラブで、香川選手や本田選手、長友選手、といった選手たちが残してきた実績を否定する余地などどこにもない。

もちろん、欧州に比べれば遥かに親日家が多いこの南米の地で、日本代表が輝かしい実績を残せればそれにこしたことはなかっただろうし、

「逆転負け、引き分け、そして大敗の幕切れは1次リーグで消えた8年前のドイツ大会と同じ。攻めに人材がいる時に限って、またも。」日本経済新聞2014年6月25日付夕刊・第15面)

という武智幸徳氏のコメントに象徴されるように、「5度目」であるにもかかわらず、過去の教訓が生かせなかったことへのもどかしさもある。

それでも、ずっと日本代表を見続けていれば、(たとえ同じ結果でも)8年前よりは確実に一回り強くなっているし、4年前と比べても確実に進化している、というのは分かるだけに、せめて一つか二つくらいだけでも、こういう時に、まっとうな擁護ができるメディアはないのかなぁ・・・と思わずにはいられない。


なお、個人的には、2002年以降、「日本代表が敗退してからが本当のW杯だ」という思いが強いだけに*9、今回は、W杯をその分ゆっくり楽しめる、と、気持ちを切り替えたところで、特に、コロンビア代表がどこまで勝ち進めるか、というところに、これから熱い視線を送り続けたいと思っている。

*1:特に、FWに入ったジャクソン・マルティネス選手は、ボールが足についていないような感じで、数少ないコロンビア側のチャンスをことごとく潰していた。後半、あの「背番号10」が入るまでは・・・。

*2:特に、この日は、作り出したチャンスの数が多かっただけに、大久保選手のミスショットの数も気になった・・・。

*3:いずれも、うぶな日本DFを上手にひきつけて、最後は完全にフリーのマルティネス選手に一番いい形で打たせる、というお手本のようなアシストだった。マルティネス選手もサブとはいえ、元々実績のある選手のようだから、ここで実績を作らせた、ということはこの先につながる。実に素晴らしい仕事だった。

*4:ハメス選手自身の活躍もさることながら、前半絶好調だった青山選手をベンチに追いやり、日本側の強力な攻撃のオプションを封じたことも大きかった。

*5:そもそも、コロンビアチームは、ハメス・ロドリゲス選手を入れるタイミングで、先制のPKを決めたクアドラード選手をベンチに下げているわけで、「調整試合」という日本戦の位置づけは終始一貫していた。それだけ舐められても勝てなかった・・・という事実は、重く受け止める必要がある。

*6:ほぼベストメンバーで臨んだ大会直前の練習試合で、日本に完敗したあの「コスタリカ」である。

*7:逆に、コートジボワールは、ドログバ、トゥーレ兄弟をはじめとする超世界級の選手たちを擁し、毎回アフリカ最強、と言われながら、これで3大会連続グループリーグ敗退、である。気の毒で仕方ない・・・。

*8:それが分かっていて、メディアは自国のチームがあたかもグループの中で“最強”であるかのように煽るし、多くの視聴者はそれに踊らされる(それは、おそらく日本に限った話ではない)。そして、試合に負ければ、結果を出せなかった選手や監督に批判の目が向くのもまた、当然のこと。ただ、そのことと、「これまでのプロセスを全否定すること」とは決定的に異なる話だと自分は思っている。

*9:日本代表の報道に割かれていた時間が、きちんと大会&他国の各試合の報道に向けられる、という意味でも、日本代表が負けた後の方が、充実しているような気がする。