桜花賞があまりにトリッキーで、キツネにつままれたようなレースだったために*1、どう評価したらよいのだ?とファンも皆迷ったであろう今年のオークス。
定石としては、どんなに人気が下がろうと、桜花賞上位1,2着馬を押さえておけば、かなりの確率で馬券が取れるレースなのだが*2、今年に関して言えば、レッツゴードンキが2番人気に支持されていてもなお、自分は半信半疑だった。
また、逆に桜花賞で惨敗したにもかかわらず、今回も引き続き1番人気に支持されたルージュバックについても同じような不安はあった。
きさらぎ賞まで、牡馬との混合レースを3連勝、という強さ自体は認めざるを得ないが、このタイプのエリート馬が春先にいったん調子を崩してしまうと、建て直すのはかなり時間がかかる、というのがこれまでの経験則。
それゆえ、桜花賞で2着に突っ込んだ(が今回も人気はなかった)クルミナルや、フローラS組(シングウィズジョイ、ディアマイダーリン)の方がまだ信頼できるのではないかな、というのが、レース前の素朴な印象だった。
蓋を開けてみれば、ルージュバックの方は、ノットフォーマルが作り出した澱みない流れに乗って好位に付け、直線で力強く抜け出す展開に持ち込む。
目標にされた分、最後は後ろから切れ味鋭く突っ込んできたミッキークイーンに差されてしまったが、実力がしっかり出せるコースで桜花賞9着からきちんと巻き返した、というのは今後につながるはずである。
一方、レッツゴードンキの方は、前走のような華やかな逃げは打てず、かといって直線に向かって脚を溜められたわけでもなかったようで、最後は見せ場なく後退して10着。
前走でルージュバックを封じ込め、自らを主役にした魔法が、一戦にして解けたのか・・・と突っ込みたくなるような拍子抜けする敗戦だった。
ゲートに入れるまでは一苦労だったクルミナルがきっちり3着に入るなど、上位5頭中3頭がディープインパクト産駒。
さらにルージュバックとアースライズ(4着)のマンハッタンカフェ産駒2頭が掲示板に乗る、という分かりやすい展開で、今回はキングカメハメハ(産駒)の出番ではなかったということなのかもしれないが、春の牝馬クラシック2戦で、これだけ明暗がくっきり分かれてしまう、というのも珍しい。
どちらが「クラシックレース」と呼ぶとふさわしかったか、と言えば、明らかに今日のレースの方だっただけに、この先の両馬の運命も自ずから想像できるところではあるが、“一度起きたことは二度、三度起きる”という格言もあるゆえに、ドンキに対しても、常に、何か大きいことをしでかすんじゃないか、という警戒感を怠ってはならぬ・・・、と思っている*3。
なお、おまけみたいな言及で恐縮だが、勝ったミッキークイーンは、いわゆる「忘れな草賞」組。
最近ではエリンコート、かつてはエリモエクセル、と、このレースからオークスを連勝した馬もいたし、マイル前後の距離実績しか積みにくいこの時期の3歳牝馬にとって、忘れな草賞の戦績は、中距離適性を占う意味で非常に大きな意味を持っていることも間違いないのだが、本番で好成績を収めた馬と同じくらい、「ここで勝って本番も人気になったがコケた」馬を見てきたせいなのか、自分はどうも軽視してしまう*4。
これまでの戦績も、今日のレースでの勝ち方も、「G1」のタイトルを担うにふさわしい申し分のないものだけに、あとは、もう一つ二つ、大きなタイトルを取って、ルージュバックともども、今年の3歳牝馬の実力をきっちり証明してくれることを願うのみである。