雨の悪戯。

台風19号による被害の収束が未だ見えない状況で競馬の話か!という突っ込みはあると思うのだが、売得金の一部は一般財源、しかも多くは畜産振興等の農業予算に充てられる、ということで、特に土曜日から明日までの4日間は、先月から立て続けに災厄を受けている農家の方々への募金も兼ねるつもりでやっている*1

で、こんな時に行われた競馬だから、当然ながら、重賞が行われた日曜日の京都、今日の東京ともに、天候は悪く、馬場も湿っていた。

秋のGⅠウィークの皮切りとなる日曜日の秋華賞は、いつもは大体良い天気の中、開幕したてのパンパンの京都競馬場の芝の上で行われるものだから、切れ味の良い良血馬、特にここ数年はディープインパクト産駒の独壇場のようになっていたのだが*2、天候が悪化して馬場が湿った数少ないレースでは、一転してディープインパクト産駒が来ない、というデータもある。

1番人気馬(アエロリット)とともに2番人気だったファンディーナも飛び、ハービンジャー産駒2頭(ディアドラ優勝、モズカッチャン3着)とハーツクライ産駒(リスグラシュー)が上位を独占した2年前のレースや、ジャングルポケット産駒のアヴェンチュラが好タイムで制する中、桜花賞馬・マルセリーナがあえなく散った2011年のレースがそのサンプル。

そして、今年も1番人気・ダノンファンタジーを筆頭に、2番人気・カレンブーケドール、5番人気・コントラチェック、さらには7番人気に留まっているもののデビューから3連勝で不思議な存在感を発揮していたサトノダムゼル、といったディープインパクト産駒たちに注目が集まる中で、「雨」の影響がどう出るか、ということが、個人的には最大の関心事だった。

結果的には、いかにも重い馬場に強そうなバゴ産駒のクロノジェネシスが、桜花賞オークスともに3着というじりっぽさをパワーで克服して優勝。そしてこれまた雨に強いダイワメジャー産駒のシゲルピンクダイヤ(桜花賞2着)が10番人気で3着に飛び込み、一方でダノンファンタジーは伸びきれずに8着*3、という概ねデータ通りの結末に。

ただ、その一方で、オークス2着のカレンブーケドールが空気を読まずに2着に飛び込んだことで*4、中途半端に予想を外してしまったのは自分だけではないはずだ。

翌日の府中牝馬S(東京芝1800mだから本来ならディープインパクト産駒の独壇場)でも、1番人気のプリモシーンが飛び*5ヴィクトワールピサメイショウサムソンオルフェーヴルという馬場悪化を苦にしない血統を持つ馬たちが勝つ、という展開になったから、「雨の日にディープ産駒を買うな」という格言は依然として生きている、ということなのだと思うのだけれど・・・。


日頃パンパンの良馬場での高速決着に慣らされ、進化と調教技術の究極系を堪能するのが日本の競馬の醍醐味だ、と思っている多くの観戦者は、良馬場での決着こそが本当の勝負で、雨のせいで本来の着順が入れ替わるのは、単なる”いたずら”。本来の姿ではないよね、という感想になりがちである*6

でも、一昨年の秋華賞を重馬場で制し、府中牝馬Sも制した(この時は良馬場だったが・・・)ディアドラが、今でも第一線の国際レースで名を轟かせていることを考えると、湿った、重い馬場で勝てる、ということには、それ自体に大きな価値があるともいえる。

どんな馬場にも対応できる超越した力の持ち主なら、そんなこと関係なく勝ち星を積み重ねるのだろうけど、人間に得意・不得意があるのと同じで、馬にだって相対的に走りやすい馬場、というのは必ずある。

そうである以上、「一生に一度」の三冠レースをどちらの舞台で勝負できるかは、その馬の将来に直結するような大きな話でもあるわけで、そんな一大事が天候の悪戯次第で決まってしまう、ということの無常さを感じるとともに、「雨の日の勝利はフロック」という感覚が自分の中に無意識のうちに刷り込まれているのをどうにかしないとね・・・と思った週末であった*7

※なお、ラグビーに表紙こそ譲ってしまったが、実質的には「ディープインパクト追悼特集」になっているNumberの最新号が↓である。
 目下の状況とちょっとタイムラグのある記事もあるだけに、このタイミングで読むとなかなか面白かったりもする。

*1:そのためなのか、日曜日以降、馬券はかすりもせず、ただただJRAに上納金を収めるだけ、という展開になっているが、それもまたよし、である。

*2:昨年はアーモンドアイ(ロードカナロア産駒)という怪物にタイトルこそさらわれたが、2着、3着は順当にディープインパクト産駒が占めていた。

*3:最後の直線で不利を受けた影響が大きかったにしても、いつもの切れ味を発揮できなかったのもまた事実だと思う。

*4:米国血脈を引き継ぐチリ産の母馬が、道悪対応力を多少なりとも補強してくれたのか、それともいち早く天候が回復傾向に向かった関西での開催だったから「稍重」でも多少馬場状態は良くなっていたのか、純粋にこの馬が強いのか、真相は闇の中である・・・。

*5:久々の出走で馬体重が大幅に増えていた影響もあるのだろうが、最下位15着という大惨敗だった。

*6:そもそも、見ている側は晴天の下で観戦する方が気分がいいから、どうしてもそれを望みがちでもある・・・。

*7:「雨のせいで負けた」とは時々言われるが「晴れたせいで負けた」とは言わないのも、無意識のなせる業かな・・・と。

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