見出しにもならない“民法改正”の気になる行く末。

今の国会がいろいろと落ち着かない展開になっている、ということは、ニュースを見ていれば素人でもある程度分かるし、より具体的な、「今国会では難しそうだ」という噂も耳にしてはいたのだが、それでも、実際に記事になってしまうと落胆を禁じ得ない。

「政府・与党は労働時間ではなく成果に賃金を払う『脱時間給』制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)の新設を盛り込んだ労働基準法改正案の今国会成立を断念する。債権や契約に関する規定を抜本的に見直す民法改正案も見送る。」(日本経済新聞2015年9月2日付朝刊・第1面、強調筆者)

元々、与野党間でそれなりに議論すべきところがある(というか、ちゃんと議論してくれないと困る)「労働基準法改正」を見送る、という判断は理解できるのだが、5年かけてじっくり煮詰め、後は可決するだけ、という段階になっていたはずの民法改正案が、ここで見送られてしまうというのは、一体どういうことなのか。

記事にも書かれているように、民法改正案の審議・採決の見送りは、安保法制のあおりを受けたもの、というよりは、

「衆参両院の法務委員会は取り調べ可視化などを盛った刑事司法改革関連法案を先に扱った」(同上)

ことによる影響の方が大きいようなのだが*1、いずれにしても、大きな異論もなくまとまっている、国民生活の根幹にかかわる法律の全面改正が後回しになってしまう、という状況は、決して褒められることではないだろう。

さらに言うと、民法改正案の今国会成立見送りを報じる日経紙の前記記事の見出しは、あくまで「脱時間給法案を断念」であり、「民法改正」は、「カジノ」と並んで添え物のように横に記されているに過ぎない。

法律家にとっての各法案に対する関心の順番と一般の人々にとってのそれとが異なるのはよくある話で、メディアの関心も、政治家の判断も、当然のことながら後者の方に寄りがちなので、「民法」が軽んじられているかのようにも思える状況にあまり恨み言をいっても仕方ないのだが、気が付くと、周回遅れでスタートしたはずの消費者契約法改正の動きに追いつかれそうな状況にもなっている中で、関係者への周知や、法改正に合わせた対応を具体的にどう進めていくか、ということを考えると、なかなか頭が痛い話なのも事実。

せめて、臨時国会か来年の通常国会の早いタイミングで決着を付けてくれれば、年度内から本格的に動けるのだが・・・

と、限りなく低い可能性に期待しつつ、「民法改正」の存在が忘れ去られないように(そして、自分自身も中身を忘れてしまわないように)ちょっとずつ仕込みをしていくくらいしかできない状況に、ため息が出る。

*1:実のところ、今国会での刑事司法改革関連法案の審議は、安保法制関連法案に匹敵するくらい長時間に上っている。ことの重大性に鑑みれば、それ自体は決して不自然なことではないのだが、安保法制と比べて、メディアに取り上げられる機会が少ないのは非常に残念な話である。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html