不敗神話が消えた後に始まりそうな伝説。

権藤監督が率いる横浜ベイスターズが38年ぶりの日本シリーズ優勝を飾り、「不敗神話」を揺るがぬものにしたのは1998年のこと。
それからずいぶんと長い時が流れ、親会社は変われど定位置は「最下位」というシーズンが続いた時もあった。

そんなチームが、ラミレス監督就任とともに一気に息を吹き返し、昨年11年ぶりにAクラスに食い込んだかと思えば、今年は読売と競り勝って滑り込んだAクラスのポジションをフルに生かし、甲子園で天気と阪神園芸を味方に付けてタイガースを葬り去ったかと思えば、「今年こそ日本一」になるはずだったカープまでをも空気を読まずにCSシリーズでぶち破り、「所詮は鯉のエサ」と舐めていた傍観者たちを横目に、まさかの日本シリーズ出場と相成った。

結果的には敵地での最終戦を待たずに、2勝4敗で敗退、ということとなり、「出場すれば常に日本一」という神話も、3度目にして終焉を迎えることになってしまったのだが、リーグ間格差が拡大し、過去10年でセ・リーグのチームが日本一になったのはたったの2回(いずれも読売)だけ、そして、過去2回のソフトバンク優勝時には、阪神、ヤクルトといずれも1勝しか挙げられなかったことを考えると、第6戦の最後の最後まで相手に冷や汗をかかせた今年のベイスターズの戦いぶりは、新たな伝説に値するものだった、というべきなのかもしれない。

個人的には、第2戦まで終わった時点で、あまりにワンサイドになりそうな予感がして、シリーズそのものへの関心が薄れてしまったことをちょっとだけ後悔していたりもする。

そして、両チームを通じて、先発陣では一番キレキレだった今永投手が投げた2試合で、ベイスターズがいずれも星を落としたことを考えると、ちょっとした展開のアヤで、勝者が逆転していた可能性もあったことに気付き、不思議な感覚に襲われている。

第1戦、第2戦と、ナイーブに三振、凡退を繰り返す桑原選手などは、このチームの「場違い」ぶりを象徴するような選手だったし、鉄壁のソフトバンク内野陣に比べると、守備もいかにも心もとない選手が多かったのが、試合を重ねるにつれ、筒香選手、宮崎選手といった主力陣が調子を取り戻し、いわば互角の勢いに持ち込んだのだから、実にたいしたもの。

そして長らく「大舞台」に飢えていた選手たちが、今回場数を踏んだことで、一段上のレベルでプレーできるようになったのだとすれば、何と効率的なことか。

こういうケースで、「あと一歩」だったチームが1年後に再び日本シリーズに出てくる可能性は決して高くない、という気になるジンクスもあるのだけれど、ここ数年の躍進を牽引した選手たちがスタメンに定着し、円熟の輝きを見せ始めるであろうことを考えると、来シーズン、より強力な勝ちパターンを作り上げて、再びシリーズの地へ赴くことになる可能性も十分ある。

神話から伝説へ。そんな美しい結末が待っているかどうかは神のみぞ知る、だけど、「何かやってくれそう」という雰囲気だけは、来年からも失わずに持っていてほしいものだな、と思った次第である。

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