週末、土曜日の新潟競馬場で、遂にその日は来た。
「中央競馬唯一の女性騎手、藤田菜七子(21、美浦・根本康広厩舎)が、25日の新潟競馬12レースをセイウンリリシイで勝ち、中央の通算勝利を35として、増沢由貴子(旧姓牧原=現調教助手)が持つ女性最多勝記録を更新した。また、今年15勝となり、自身が昨年記録した女性騎手の年間最多勝(14勝)も上回った。」(日本経済新聞2018年8月26日付朝刊・第29面、強調筆者)
昨年、女性騎手の年間最多勝記録を破った、というのが話題になってから*11年も経たないうちに、藤田騎手は通算勝利数でもあの牧原由貴子騎手を追い抜いた。
その前の週の日曜日には一日2勝挙げるなどここにきて好調の波に乗っているし、今年に入ってからは関東の若手騎手の中でも騎乗馬が質量ともに増加傾向で、特にローカル開催であれば十分に勝ち負けを争える騎手という存在になってきていたから、先週の時点で、そう遠くないうちに抜くよな・・・と思っていたのだが、想像していた以上に速いペースでの達成。
一部のメディアには「あくまで通過点」といったような本人のコメントも掲載されていたが、その台詞が自然体に聞こえるくらいこのタイミングでの記録更新に違和感はない。
ただ、そうはいっても、現状ではまだ、勝っても負けても「女性騎手」という、よく言えばブランド、悪く言えばレッテルが彼女には常につきまとっているのが、個人的には少々引っかかるところ。そして、先頭を走る荻野極騎手や、三兄弟の次男・木幡巧也騎手、坂井瑠星騎手といった同期のトップクラスに比べると「35」という数字でもまだまだ物足りないのは事実である。
上記の記事が新聞を飾ったその日に、今後、大きいタイトルも狙っていけそうな良血3歳牝馬、マルーンエンブレム*2で36勝目を挙げた藤田騎手の姿を見て、もう「女性」という冠を付けるのは失礼だよな・・・と思ってしまったのだが、それでもテレビメディアはまだまだ藤田騎手の“アイドル的要素”をただひたすら消費することしか考えていないように思えて、ちょっと腹立たしい。
それよりは、今年のうちに重賞制覇とかG1初騎乗を成し遂げ、東西のリーディングで44位(2018年8月27日現在)という現在のポジションをちょっとでも引き上げれば、彼女に対する見方も俄然変わってくるし、遅かれ早かれ「女性である」ということだけで区別して論じるような時代ではなくなると思うのだけれど、今はそれ以前に「大きなケガをしない」というだけをただただ願いつつ、藤田騎手の秋以降の更なる飛躍を期待してみることにしたい。