現政権で長く今の地位にいる某官房長官が、講演で携帯電話利用料について「今よりも4割程度下げる余地がある」と発言した、というニュースが22日に報道されて、またか・・・という思いに駆られた人も多かったことだろう。
元々、この業界、「2年/4年縛り」とか「SIM縛り」とかで、公取委から散々目を付けられているし、人気取り施策に走りがちな現政権でも、3年前、首相が総務大臣に直々に「値下げ」の検討を指示するなど、ここ数年“受難”が続いているのであるが、さすがに政府関係者が具体的な数値まで上げて「値下げ余地」とのたまった、ということになると、穏やかではない。
情報通信審議会での議論開始をにらんで世論を盛り上げるための観測気球、という意味合いが強かったのだろうが、当然ながら携帯大手3社の株価は下落するし、それに輪をかけて、翌日には内閣府が「日本では消費に占める割合が経済協力開発機構(OECD)加盟国で4番目に高いと分析した」という記事まで飛び出してきた。
さすがにこのままズルズル行くとまずいと思ったのか、今日付けの社説で日経新聞が、
「菅義偉官房長官が講演で「携帯電話料金は4割程度下げる余地がある」と発言した。政府高官が民間企業の決める料金水準にあからさまに口出しするのは異例であり、賛否が分かれそうだ。」(日本経済新聞2018年9月24日付朝刊・第2面、強調筆者)
と釘を刺したものの、
「ただ、日本の通信市場が大手3社による寡占化など問題が多いのは事実で、さらなる改革が欠かせない。」(同上)
と続ける・・・と、結論としてはどっちつかずな雰囲気。
確かに、今の日本の携帯電話料金を「安い」と褒め称えるつもりはないし、端末にしても料金プランにしても、選択肢が少なすぎる、という不満は契約更新(機種変更)のたびに高まる一方なのだが、だからといって「政府」が民間企業のビジネスの根幹である料金体系に“口先介入”する、というのはやはりどう見たって異常な事態なわけで、そういったことを平然としてしまうところに、長い任期の上に安住している現政権の傲慢さが如実に現れている、ということは、もっと突っ込まれてよいのではなかろうか。
いくら高い、といっても、せいぜい月1万円になるかならないか、という程度の金額で「家計を圧迫する」などと騒ぐのはあまりに大袈裟だし*1、そもそも、無駄に高いスマホを買わずに、必要最小限の機能だけの端末と必要最小限の料金プランで契約すれば、月々の支払いを安く済ませることはいくらでもできる。それをしないのは、多少コストを余分を払っても「iPhoneを持ちたい!」という(世界でも他に例を見ない)日本人の無駄なブランド志向の帰結に他ならないのだから、そこで携帯電話会社を責めても仕方ない*2。
そういった歴史的経緯とか、消費行動の実態をどこまで把握した上での“口先介入”なのか・・・。
個人的には、携帯各社のスマホ一辺倒の販売戦略が緩和され*3、契約者の選択肢が増えれば万々歳なのだが、今のような動きが背景にある限り、そうなったときのうれしさよりも、「国が平気な面で民間事業者の販売戦略に口を出してくる」時代になったことへの恐怖感の方が遥かに強いだろうから、素直に喜ぶことはできないだろうな、と思わずにはいられないのである。