「令和」に変わったおかげで生まれたありがたい3連休。
あいにく、いろんな”宿題”が積もりに積もってしまった結果、「休日」といってもほとんど作業に費やさないといけないことになってしまったのだが、世の中に不穏な空気が漂う中、東京・京都・小倉の3場で今週も淡々と競馬が続けられたおかげで、つかの間の息抜きはできた。
土曜日からの流れでいうと、相変わらず関東の騎手陣は受難続きで、前週末に藤田菜七子騎手が落馬負傷したのに続き、今週は絶好調だった横山武史騎手が早々に落馬負傷で離脱。
「関東リーディング首位」の田辺騎手と並んで、大ベテランの横山典騎手が気を吐いているのは明るいニュースだが、全国のランキングでいえば2人ともトップ10には入っていない、という異常事態になってしまっている。
その代わりに、ようやく目覚めた感じのルメール騎手が9勝の固め打ち(日曜日は東京競馬場でGⅠ含む6勝だから、関東の騎手たちの勝ち星が伸びないのもやむなし、である)。
川田騎手も5勝、サウジアラビアからとんぼ返りした武豊騎手も4勝を上積みし、この3人が(いなくなったマーフィ騎手を挟んで)後続に10勝近い差を付けて突っ走る、という展開に。
次の週末は、ルメール、武豊の両騎手が日本を離れる予定だけに、またちょっと違った状況になるのかもしれないが、とにもかくにも関東勢の巻き返しに期待したいなぁ・・・*1と思わずにはいられない。
で、そんな「西高東低」の嵐が吹く中で行われたのが、今年最初のGⅠ、フェブラリーS。
過去3年上位に名を連ねたゴールドドリームや、進境著しいクリソベリルを遠征で欠いたために、メンバー的にはかなり層が薄くなった感はあったのだが、それでも前年覇者のインティはステップレース(東海S)を無難に3着で乗り切って駒を進めてきていたし、大井転厩後、安定感を増した一昨年覇者・ノンコノユメも健在。
そして、これらの長年のダート路線組に、前走初めてのダート戦でいきなりインパクトのある走りを見せたモズアスコットや、前年夏にダート転向して武蔵野S2着の実績を持つタイムフライヤーといった芝GⅠホルダーたちが挑む、ということで、若干異色なれど構図としては面白い絵になっていたように思う*2。
前世紀の終わり頃、このレースがGⅠに昇格してからはや24回目。
「芝とダートは別物」という評価も当たり前のように定着した今、芝でGⅠ、重賞タイトルを持っているからと言ってそう簡単に通用するものではない、というのが”常識”だったし、特にスピードとタフさの両方が要求される東京ダート1600mの舞台で、ダートスペシャリストを押しのけて勝つ、というのはそう簡単なことではない。
だから、ルメール騎手騎乗&1番人気の芝路線の馬は脇に置き、東海S上位組と、数少ない関東馬、デルマルーヴルに期待を込めたのであるが・・・
終わってみれば、ダート界歴戦の勇者たちが、逃げ損ねて自滅したインティを筆頭に枕を並べて討ち死にする、という惨状をしり目に*3、脇に置いたモスアスコットが芝の時代を上回る圧倒的なパフォーマンスを見せて快勝、という馬券的には全く報われない結果に。
もちろん、安田記念とフェブラリーステークス、という古馬マイルの最高峰レースをダートと芝でどちらも勝てる馬が現れたのは、あの異能馬・アグネスデジタル以来のことだから、その場面を目撃できてよかった、という思いはある*4。
「芝では限界&1マイルまでの馬」と皆に思い込まれていながら、予定外で出走した天皇賞(秋)を制し、香港GⅠのタイトルまで奪ったあげく、フェブラリーSでG1・4連勝を飾った世界屈指の異能馬(その後安田記念も制覇)の華々しさ*5と比べるとはるかに地味な勝利。
ただ、勝ちっぷりの豪快さ、ということでいうと、今年の勝ち馬も決して負けていない。
そして、昨年一年間、戦績が頭打ちになっていた中で選んだ今回の選択肢が見事的中したことで、彼がこの先どこに向かうのか?ということもちょっと気になってきたわけで、馬場を問わないこの馬のタフさは、「海外の芝」でこそ生かせないかな、と思わずにはいられなかった。
選択肢が多い、それゆえに、先々の使い方もちょっと難しくなるのかもしれないが、そこはレース選択に絶妙の才を発揮される矢作調教師のことだから、この馬でも、”誰もが予想しなかったベストな路線選択”で、まだまだファンを沸かせてくれる、と自分は信じているのである。
*1:場合によっては、今、南関東で大旋風を巻き起こしているミシェル騎手に短期免許を交付してでも・・・。
*2:残念なのは騎手だけでなく「馬」も「西高東低」。このレースでは今に始まった話ではないとはいえ、東京競馬場のGⅠなのに美浦所属馬が僅か2頭、というのは、やっぱり少々寂しかった。
*3:最低人気で2着に飛び込んだケイティブレイブはともかく、東京巧者のサンライズノヴァは買えたんじゃないか?というのが、最後の直線の猛烈な脚を見て一瞬頭をよぎった”タラれば”なのだが、あの追い込み脚質の気まぐれさに何度となく泣かされてきた者としては、とてもじゃないけど手を出せなかった、というのが正直なところである。
*4:芝、ダート両方のGⅠを制した馬はこれで5頭目だが、アグネスデジタル以外の3頭は、芝のGⅠホルダーといっても、2歳GⅠだったり、3歳のNHKマイルカップだったり、という歴史だから、本当の意味で両方で頂点を極めた馬となると、これが事実上2頭目、ということになる、もちろんクロフネなどは怪我なく現役を続けていたら、芝の古馬GⅠを取れた可能性は十分にあったと思うが・・・。
*5:アグネスデジタルとともに歴史を作った四位騎手が間もなく引退を迎える、というタイミングであることも、この馬の美しい記憶を蘇らせる一因だったりする。