「奇跡感」のない快挙。

何事もなければ、土曜競馬のメインレースが終わった後に放送波を切り替えて、”ジャイアント・キリング”と呼ばれる瞬間を4年ぶりに再び見届けることができたはずだった。

それがまさか、高熱で床に伏している間に試合が終わり、直後のニュースまで見逃すことになってしまうとは・・・。

まぁ、これがサッカーのW杯本戦の日本代表の試合だったら、熱が40度超えてようが最後まで試合を見届けただろうし、相手が「いかにも強国!」と素人でも分かるニュージーランドとかオーストラリア、イングランドとかフランスだったら、後半の途中くらいまでは執念で這ってテレビを見ていたかもしれない。

4年に一度しか「海外」のナショナルチームを意識しない浅いラグビー観戦者にとっては、アイルランドという国は決して馴染み深い国ではなかったし*1、その「アイルランド」が同じPOOLの中で一番ランキングが上のチームだ、という知識が生半可あったからこそ、「ここは無理に勝ちに行く試合じゃないんじゃないの?」と思ってしまっていたところもある。

悲願の決勝トーナメント進出のためには、絶対倒さないといけないのがサモア。そして初戦でアイルランドに完膚なきまでに叩きのめされて”手負い”状態になっているものの、日本にとってW杯では何一つ良い思い出がないスコットランドもかなりの難敵。

となれば、ランキングトップのアイルランドには順当に勝たせてあげて、ボーナスポイント拾いに行くくらいの健闘で次につなげる、というのが、素直な戦略なのかなぁと思ったし(その割には派手な試合前記者会見もやっていたようだが・・・)、それと平仄を合わせるように、前日までは、リーチ・マイケル選手が控えに回り、復帰が噂されていた福岡堅樹選手はベンチにも入らない、ということになっていたではないか・・・。

それが、終わってみれば、リーチ選手は前半途中から出場して大奮闘、福岡選手も後半途中出場で逆転トライ&試合終盤のターンオーバー、という大活躍。

後半は敵チームを「完封」する形で「19-12」のスコアでの勝利。日本中のメディアが大騒ぎ、という事態になってしまった。


実に残念なことに、自分が見ることができたのは、ちょっとしたダイジェスト映像と再放送の最後の10分弱だけ。それも熱にうなされながらだったから、今回の試合に関しては、「印象に残ったのは、福岡選手の豪快な走り」(だけ)というコアなファンには思いっきり怒られそうな感想しか出てこない。

ただ、たった8分程度とはいえ、田村選手が4本目のPGを決めた後の日本代表の試合運びは、(陣地的には押し込まれていたものの)随分と落ち着いていたように見えたし、これまでなら崩れてあっさり同点に追いつかれても不思議ではないところで、逆にあわや追加点、という展開に持っていき、後半40分で相手に試合をあきらめさせた、というあたりには「地力の差」すら感じられた。

これが、これまで選手たちが散々鍛えてきた「持久力」のたまものであり、そして、自分が未だ見ていない前半の試合展開の中で、相手の体力を消耗させる激しいアタックを仕掛けたからこそそうなった、ということなのだろうけど、最後の最後のワンチャンスに賭けて文字通り「奇跡の逆転勝利」を飾った4年前の南アフリカ戦と比べると、同じ快挙でも随分印象は違うなぁ・・・と思ったわけで*2、今はそれを「その瞬間」を目撃できなかった自分へのささやかな慰めにしているところである(もちろん、「奇跡感」が乏しいからといって勝利に価値がない、ということでは全くなく、むしろ、ここまで「順当」さを見せたことにこそ価値がある、はずである)。

そして、自分が目撃したいのは、宿敵*3スコットランドからの30年ぶりの勝利と、その先にあるもっと大きな存在からの「金星」なのだ、と、ここでこっそり宣言しておくことにしたい。

*1:W杯ではベスト8より上に行ったことはないし、「6か国対抗」のような大陸別大会の情報をEUROのように生々しく入手できるわけでもない。2017年の来日時の試合を見に行ってればまた印象は違ったのだろうけど・・・。

*2:例えて言えば、アトランタ五輪でブラジルに勝った時の日本代表と、2002年のワールドカップでロシアに勝った時の日本代表、同じ1-0だったけど、ずいぶん印象は違ったよね・・・という感じだろうか。

*3:と自分も含めた一部の世代の日本人だけが勝手に思っている・・・

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