再び、変わる光景。

五輪前、札幌に行ってしまったマラソンの最後の代表選考枠の争いもまだ続いているシーズンではあるのだが、この時期になるとカレンダー通り盛り上がってくるのが「駅伝」である。

大学の方は、出雲駅伝の波乱(国学院大学三大駅伝初優勝)に続き、全日本大学駅伝でも東海大学が前シーズンの箱根に続くタイトル奪取を果たして、いよいよ、ここ数年大学駅伝界を席巻していた青山学院大学が名実ともに王座から陥落しそうな状況である。

そして、実業団の方も、元旦の景色がまた変わりそうな気配になってきた。

コニカミノルタ優勝、ホンダが2位、という上位の結果だけ見れば、そんなに違和感はない*1

だが、昨年19年ぶりの優勝を果たし、ニューイヤー駅伝でも5位入賞を果たした富士通が17位でまさかの「予選落ち」。

さらに、自分が今更ながらに気付いて驚いたのは、コニカミノルタ富士通の好敵手として、ニューイヤー駅伝でも東日本実業団でも常に上位争いを繰り広げ、一時代を築いていた日清食品グループが、今シーズンから駅伝を”撤退”していたこと

MGCに佐藤悠基選手、村澤明伸選手が日清食品グループ所属選手として出場していたから今の今まで全く気付かなかったのだが、今年の初めから結構大きなニュースになっていたようで・・・*2

駅伝界に新しい風を吹き込むかと思われたDeNAが、昨シーズン、早々に”撤退”を決めたときもいろいろと思うところはあったのだが、未だにニューイヤー駅伝の大会記録を持っているチームまで消滅の道を辿る、ということになると、より考えさせられるところは多い。

「駅伝だけが陸上じゃない」とか、「長距離ランナーの育成に、駅伝は逆効果」と言われるようになって久しいことを考えると、「駅伝大会は目指さず、個人種目を目指す選手のサポートに徹する」という企業が出てきても別にいいじゃないか、という話になりそうだが、どこまでが本音でどこからが建前か、というのが非常に分かりにくいのも企業スポーツの世界の「公式発表」の常だけに*3、あまり前向きに評価しすぎるのもどうなのかな、と思う。

唯一の救いがあるとしたら、”撤退”によって様々なチームに移籍した選手たちが、東日本実業団駅伝で力走して、それぞれの所属チームを引き上げたことだろうか。

特に入社直前で内定取り消しの憂き目にあった山梨学院大出身の永戸選手は、新人ながら日立物流の6区で区間6位、と立派に役割を果たしているし、コモディイイダに移籍した駒沢大出身の中谷選手も5区で出場。会心の走りではなかったようだが、チームは見事に予選通過最低ラインの12位に食い込み(なんと13位の八千代工業とは5秒差!)、初のニューイヤー駅伝出場を決めた*4

そして、「マラソンランナー育成に注力する」というテーゼを掲げて活動していたはずのGMOアスリーツが、初めて参戦した大会で堂々の5位だった、というのも、何やら新しい歴史を予感させる*5

思えば、実業団駅伝の世界も、かつて上位争いの常連だったエスビー食品、日産、ダイエーNECといったチームが消え、それに代わってコニカ日清食品トヨタ自動車といった新勢力が出てきて新しい景色を作る、という歴史の繰り返しだった。

ニューイヤー駅伝の方は、時空を超えて名門であり続ける旭化成が目下3連覇中、という状況ではあるのだが、それを追い上げるチームのユニフォームの色は確実に変わってきているだけに、この先のドラマにちょっと期待しつつ、眺めていくことにしたい。

*1:コニカミノルタは今世紀に入ってからコニカ時代も含めてニューイヤー駅伝で8度の優勝。東日本でも2度の3連覇を果たした名門チームだし、ホンダも東日本実業団では過去に何度も優勝している(直近では2年前)チームである。

*2:山梨学院大・上田監督悲痛 日清撤退で選手内定消滅 - 陸上 : 日刊スポーツなど。

*3:しかも支援の対象になっていた佐藤、村澤の両選手が、MGCでは惨敗という結果に終わっただけになおさら。

*4:リザルトはhttp://hnj.jita-trackfield.jp/jita/wp-content/uploads/2019/11/ekiden_2019.pdf参照。

*5:某深緑系大学の監督の次の進路か・・・と勝手に妄想を膨らませて久しいのだが、本格的に駅伝参入ということで、ますますその可能性は高くなってきたんじゃないか、と個人的には思っている。

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