今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月13日版

13日の金曜日だから、ということではないのだけど、前夜の「パンデミック宣言」を皮切りに、とうとう新しいフェーズに突入してしまったな・・・という印象すら受けた一日だった。

今まさに”震源地”になってしまったイタリアだけでなく、フランスで、イギリスで、国のトップがかなり踏み込んだコメント&対策を打ち出し、夜(日本時間では14日未明)になって米国も遂にトランプ大統領「非常事態宣言」

株価の上下動や為替の変動はまだ想定できる出来事ではあったのだが*1プロスポーツから、今がまさに佳境だった各五輪競技の大会中止に至るまで、全世界的なイベント中止の動きの早さは想像をはるかに超えていた。

不謹慎ながら、先週くらいから、話題の「伝染病ゲーム」に自分もすっかりはまってしまっているのだが、次々と感染拡大、発症者続出、自国防衛のために人の行き来を止め、その裏で急ピッチの治療薬開発を進める、という展開は、まさにこのゲームの中で表現されている世界そのものである。

Plague Inc. -伝染病株式会社-

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そして、かなり早い時期からCOVID-19に対応し続けているはずのこの日本の煮え切らない状況と比べてしまうと、国のトップ自らが、

Some people compare it to seasonal flu, alas that is not right. Owing to the lack of immunity, this disease is more dangerous.
It is going to spread further and I must level with you, I must level with the British public, many more families are going to lose loved ones before their time.
Coronavirus: People with fever or 'continuous' cough told to self-isolate - BBC Newsより (強調筆者)

と、的確ながらインパクトのあるメッセージを発して緊急時モードに一気に切り替えていく様に接して、残念なギャップを感じざるを得ないのも事実だったりする。

もちろん、他の国と比べて日本が全くダメ、などというつもりはない。

特に、これだけ早い時期からウイルスの脅威に晒されていながら、犠牲者をこれだけ少ない人数に抑えているというのは、今のところ日本の現場の医療の水準、環境の高さを証明しているといって良いのだろうし、既にあちこちの国で指摘されている”医療崩壊”のような現象が顕在化していない、ということもポジティブに評価しなければ、二次感染防止のために日々神経を張り詰めている現場の関係者に申し訳がたたない。

ただ、(毎日定点観測しているわけではないので、たまたまだったのかもしれないが)先月末の「対策」公表から始まった”非常時対応”がちょうど終わる予定だった日、だからか、今日の電車の中の人の数は、数日前と比べても多かったような気がしたし、マスクを付けている人の数も思った以上に少なかった*2

時々カフェ等で耳に飛び込んでくる一般人の会話に接しても、これだけ問題が大きくなり、世界中で危機感が再共有されている状況になっているにもかかわらず、いち早く対策が打たれているはずの日本国内で、危機感が今一つ浸透していないように思えてしまう状況はあるわけで…。


おそらく、政府関係者が認識している状況は、日本も他の国も大差ないはず。

でも、そこで、(大げさなくらいに)「危機的状況」を宣言してモードを変えるか、それともあえて「そこまで深刻な状況ではない」という建前を維持しながらゆるりゆるりと対策を進めていくか、というところで、日本のスタンスは異彩を放っている。

同じ島国で、自分が知る限り国民の気質も日本人に極めて近い英国などは、他の欧州諸国に比べると比較的ソフトな対応で状況を乗り切ろうとしているように見えるが、それでも先ほどご紹介した通り、リスク自体は的確に伝えられているし、「検査で判明している感染者数よりも実際の感染者数ははるかに多い」という専門家の意見がオフィシャルなものとして伝えられている、という点でも、日本と、かの国の間には決定的な違いがあるわけで、公式に報告されている「陽性判明者数」だけを見て”抑え込んでいる”と強弁したり*3、「判明」したかどうかだけで一喜一憂するようなところまで共通しているとは全く思えない。

「判明」した者以外はまだ感染していない、自分の周囲にも感染が判明した人はまだいない。だからテレビやSNSでどれだけ騒がれていても所詮は自分とは無関係の世界の話。そんな「他人事」感が、今の緩んだ、危うい世の中の空気を作り出している、とまで言ってしまうと言い過ぎだろうか。

事態は未だ、猛スピードで進行中だから、結果的に今回の「コロナ危機」にどういうアプローチで対処するのが正解だったのか、「一区切り」が付くまで答えを出すのは難しいのは確か。

”封じ込めている”というアピールにより、世の中のパニックを”トイレットペーパー騒動”くらいで食い止めたことが、結果的にプラスに働く可能性だってある。

ただ、体調が芳しくなくても、近くに発症した濃厚接触者がいるような場合でなければ、検査を受けることもままならず、1週間、2週間経って症状が悪化して初めて「1」とカウントされるような状況が、いや、それ以前に、体調が芳しくなくても、騙し騙しで職場に数日出かけていかないといけないような状況*4が日常化しているのに、それを元に「感染拡大を防いでます」とアピールするような社会が本当に健全なのか?と問われれば、とてもじゃないが自分は肯定する気にはなれない*5

そして、今、必要以上にリスクが低く見積もられて発信されている結果、日本だけがいつまでもウイルスとダラダラ付き合い続け、それがもたらす経済へのダメージも長々と引きずり続ける、という状態に陥ってしまう可能性も否定できないように思われる*6

世の中の全てを止めるわけにはいかない。だからこそ、正しくリスクを伝え、異変を感じたら速やかに検査し、必要なら休み、回復したら交代で休みに入る人の穴を埋める、というサイクルを粘り強く回していくことが不可欠になるのだが、最初の前提のところがいつまでも狂ったままのように見えるのが、どうにもこうにも歯がゆくて仕方ないわけで、今は、今年の夏くらいに、世界が「ポスト・コロナ」でリスタートを切り始めた時に、日本だけがズルズルと置いていかれなければよいけどなぁ・・・と、ただただ願うのみなのである。

*1:振れ幅の大きさは想像をはるかに超えたが・・・。

*2:今や「感染しないため」ではなく「(まだかかっていない人に)感染させないため」にマスク着用が必要になってきている状況だというのに。

*3:多くの国の人々からはそんなことは全く信用されておらず、ここまで世界的に拡大する前から日本に渡航しての商談をキャンセルする動きは連鎖的に広がっていたわけだが・・・。

*4:最近の発症者の事例の中には、このタイプのものも実に多い。

*5:現時点で低い水準に抑え込んでいる「死者」数も、もしかしたら毎年10万人弱の「死因・肺炎」の数字の中にCOVID-19に起因する分まで紛れ込んでいる可能性はあるし、今後、亡くなって初めて感染していたことに気付く、というパターンも若年者を中心に次々と出てくるような気がしてならない。

*6:この辺は、対策が後手後手に回った結果、バブルの後始末に何十年も費やした、という歴史とも重なるところはある。

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