今年はいろいろと浮き沈みが激しい一年だったこともあり、それまでのルーティンの中でピタリと「断絶」してしまったものも結構多い。
その一つがフィギュアスケートを見る、というたしなみで、それまでなら、シーズンが始まった時点で、今年の●●選手の曲目はこうで、プログラムの構成はこうで、というのが大体頭の中に入っていたのに、今シーズンはグランプリファイナルが終わってもまだ「活字」ベースの情報収集以上のことはしていない。
自分の中では、前シーズンの江陵での歓喜と悲劇を目撃して、何となく感情がピークアウトしたところもあるし、何度も繰り返される氷上の“新陳代謝”について行くのに疲れた、というところもある。
ただ、今シーズン、紀平梨花選手が大躍進を遂げている、というニュースだけはやっぱり気になっていて、これだけは見なくては、ということで、(競馬中継以外では)久々にテレビを付けたのが今年の全日本フィギュア(女子フリー)だった。
結論から言えば、最終グループ滑走者、特に結果的に「トップ4」を占めた紀平梨花、三原舞依、宮原知子、坂本花織(滑走順)の4選手の演技には、凄い、の一言。
一昔前の全日本選手権の最終グループといえば、極度の緊張感から、どんな実績のある選手でもある程度のミスは付き物、という印象はあったし、それゆえ、精神力の強さを発揮してパーフェクトな演技をした選手が浮上する*1、という構図になりがちだったのだが、昨年の全日本フィギュアあたりから、「大舞台でもミスしない」というのがむしろデフォルトになった感があって*2、今年も最初に滑った紀平選手を皮切りに、上位に入った選手たち*3がほぼノーミスで滑り、合計220点を超えるスコアを次々と叩き出す*4、という極めてえげつない展開となった。そして、そんな中でも、伸びやかなスケールの大きさが飛び抜けていた坂本選手が「SP2位」の貯金との合わせ技で優勝し、続く2位には、2度のトリプルアクセスを完璧に決めて抜群の技術点を支えにフリーで堂々の1位を確保した紀平選手が入る*5、という、演技を見ていた者ならだれしもが納得する結果に・・・。
4大会連続で守り続けていた女王の座から陥落した宮原選手にしても、決して転倒等の大きな失敗があったわけではなく、流れの中で最後まできっちり演技はしていたし、昨年のスコアを上回る223.34点というハイスコアも出しているのだが、それでも、「3番手」にしかなれなかった、というところに、この1,2年の女子フィギュア界の「地殻変動」の恐ろしさがある*6。
結果的に世界選手権に選ばれた顔ぶれは、昨年の五輪代表2名に紀平選手が加わっただけだし、日が変わった翌日の男子フリーで、(いつものように羽生結弦選手が欠場する中)宇野昌磨選手が安定の3連覇を成し遂げ、2位には久々に復帰したレジェンド・高橋大輔選手が入る*7、という、あまりのお約束的な結果になってしまったゆえに*8、全体としては落ち着いた印象となってしまったのだけど、それでも、女子最終グループの戦いは、ちょっと時間が経てばYou Tubeで振り返ってみたくなる気分になることは間違いないような気がして・・・。
長いサイクルの中で浮き沈みがあるのもフィギュア界の常。
これまでにも、「層が厚いな」と思った数年後に一気に選手層が薄くなってしまう、という事態に陥った*9ことがあるだけに、先のことまでは何とも言えないのだけれど、今は、今年の大会が、数年後振り返った時に「あの時が転換点だったな」と思えるような存在になることを、ただ願うのみである。