29年ぶりの雨、が有馬記念にもたらした波乱。

昨年のキタサンブラックのような絶対的な主役はいない。

だが、秋の天皇賞を制したばかりのレイデオロを筆頭に、この秋絶好調のキセキ、牝馬G1タイトル持ちのモズカッチャン、凱旋門賞帰りのクリンチャーと4歳の主役級は一通り参戦し、迎え撃つ5歳陣も引退レースのサトノダイヤモンド、元ダービー馬マカヒキ宝塚記念馬・ミッキーロケットと、今年の屈辱を晴らすにはふさわしい顔ぶれ。
さらに、6歳勢もG1常連の元JC優勝馬シュヴァルグランに、上がり馬・パフォーマプロミスが顔を揃え、最後に人気投票で上位に食い込んだオジュウチョウサン武豊騎手騎乗、最内枠で話題を振りまく・・・と、多士済々で各メンバーのストーリー的にも馬券的にも近年稀に見る面白さになったのが今年の有馬記念だった。

ローテーションからしても、外国人騎手が席巻している今年後半の流れからしても、レイデオロの優勝はまず堅くて、順当ならその後にキセキ、シュヴァルグラン。キセキが連戦の疲れで飛ぶようなら、C・デムーロ騎手騎乗のパフォーマプロミスやマーフィ騎手騎乗のミッキーロケットに食い込む目が出てくるか・・・といった緩い予想で臨んだのであるが・・・。

勝ったのは唯一の3歳馬、ブラストワンピース。
過去10年、1番人気の勝率60%、という「鉄板」レースであるにもかかわらず、4番人気のイナリワンが制した29年前のグランプリレースと同様、3番人気の馬が上位人気馬を蹴散らす、という結末で「平成最後の有馬記念」は幕を閉じることになった。

鞍上はかつてオルフェーヴルでグランプリ騎手の名声をほしいままにしていた池添謙一騎手だったから、外国人騎手の連勝もここでピタッと止まった*1

以下、言い訳も兼ねて、ちょっとだけ振り返ってみる。


菊花賞から直行のローテとはいえ、その年のクラシックタイトルを持っておらず、しかも一度も連に絡んだことがなかったような3歳馬*2がここで主役を張ることなんて、想定できるはずもない。

レースの前後だけ降り続いた季節外れの雨*3で緩んだ馬場が、あと一歩の切れ味が足りずに泣かされていたこのハービンジャー産駒に有利に働いたのか、それとも、直線で追いかけて捕まえきれなかったレイデオロルメール騎手に一瞬の心の隙があったのか。

「そういえばシルクレーシングの勝負服の3歳馬」が連日重賞を荒らしまくったのが今年の始まりだったな、とレース後に気付いても後の祭り。

そして、2着に4歳馬・レイデオロ、3着に6歳のシュヴァルグランが入り、5歳馬は今回も馬券に絡めない4着・ミッキーロケットが最上位、というのも実にこの一年の競馬界を象徴する結果だった、といえるだろう。

唯一残念だったのは、いつものように逃げていたキセキにオジュウチョウサンが絡んでハイペースの展開になってしまったことで、両馬とも最後の最後で馬券圏内の競り合いに絡めなかったことだが、まだ平地で2勝しかしていないオジュウチョウサンが、直線に入ってからも一瞬「更に伸びる?」という期待を抱かせてくれたのは、大いなる誤算でもあった。

いろいろ物議をかもした路線変更だったが、前日の中山大障害で元主戦の石神深一騎手が、障害騎手としての腕の確かさを別の馬で見事に証明した*4こともあり、意外とうまくいくんじゃないか*5、と一年の最後で思えたのは良かったな、と。

なお、昨年同様、今年も、有馬記念の後の「カーテンコール」で、レース開催日があと一日残っている。

今一つクラシック本番に直結しないメインのG1は放っておくとして、最大の注目は今週6勝(日曜日だけで5勝)を挙げ、武豊騎手の年間最多勝(212勝)にあと「1」と迫っているルメール騎手の動向。

普通に考えれば悠々記録更新まで行けるだろう、というところなのだが、思い出されるのは、昨年、ルメール騎手が「200勝」の大台にリーチをかけた状況で最終日の開催(中山)に臨み、1勝もできずに涙をのんだ、というエピソード。

G1が組まれているのは中山競馬場だが、中山に行くと有力騎手が集まる上に、若手騎手限定の特別戦も組まれていて騎乗機会が減る。そういう皮算用をしてまで「記録」に挑むのかどうか、がちょっとした見どころかな、と思っているところである。

*1:こういうところはさすが池添騎手、と、同じ日本人としてちょっと誇らしかった。

*2:2014年に菊花賞で惨敗したトゥザワールドが2着に食い込む、という大波乱があったが、この馬も皐月賞では2着に食い込んでいる。

*3:アナウンサーは「平成元年以来」というのをしきりに強調していたが、自分も長らく記憶がないのでおそらく本当にそうだったのだろう・・・。

*4:先頭が激しく入れ替わり、断トツ本命だったアップトゥデイトが落馬する、という荒れた展開の中、騎乗するニホンピロバロンで巧みに好位置をキープし、追い込んでくるタイセイドリームをハナ差しのぎぎって優勝した手腕は見事の一言に尽きる。そして、前年のオジュウチョウサンアップトゥデイトの一騎打ち名勝負とはまた一味違う名勝負だったと思う。

*5:このまま調整が順調にいってくれれば、来年の春の天皇賞あたりが非常に楽しみである。

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