3月。

早いもので今年もふた月が経ち、
いよいよ卒業と就職のシーズン。
学生さんのブログの記事にも季節を感じる*1
http://d.hatena.ne.jp/sophia_flos/20060302/1141306635



自分のことを振り返ってみると、
この時期は、卒業することに迷いに迷って、
迷いつかれて思考停止していた時期で、
「新生活への期待感」などという感情とは程遠かったのを思い出す。


法学教室3月号の巻頭言で、道垣内弘人先生が、

「私が学生だった頃は、どちらの学期の科目も2月にまとめて試験がされていた。」

と書かれているが*2
「私が学生だった頃・・・」などとおっしゃられるまでもなく、
つい最近までかの大学は年1回試験だった。
(「最近」の尺度が少し狂ってるかもしれぬが、大目に見られたし・・・。)


年1回試験のよいところは、
土壇場で単位のスクラッチ(取り消し)がかけられること。
年2回試験で、4年の夏学期に必要単位数+必修科目をクリアしてしまうと、
どうあがいても大学を追い出されてしまうのだが、
年1回試験だと、単位余裕残しでも、
必修科目の単位をとらない(又は取り消す)ことで、
堂々と留年することができる。


何せ、当時は先行き不透明な不況の入り口時代。
某法学部長が、留年者の多さを危惧する声に対して、
「専門課程に3年費やすのは、法学教育の理想的な姿である」的な
ことさえのたまっておっしゃられていた時代だけに、
3月に差し掛かってふと気が付くと、
国家試験合格・採用組を除けば、
同期入学のうち、周りでまともに卒業するのは自分だけ。


意を決した自分は、一通り試験を受け終わってはいたものの、
友人と連れ立って英米法の某助教授(当時)のところに足を運び、
「単位は付けないでください」とお願いすることになったのである*3


その友人は、晴れて留年。
だが、自分は心の迷いを思いっきり見抜かれてしまい、
態度を保留したまま、
「本当に留年したいのなら○月○日までに連絡してください」
と言われて、すごすごと帰ってきてしまった。


今振り返ると、
あの時の選択は、半分は間違っていたが、
残りの半分は正しかった(と思う)。


卒業を1年遅らせれば、
9割方自分の望む進路に進めていて、
今とはまったく違った人生を歩んでいたに違いない、
と、10年近く経った今でも時々思う。
試験に受かるまで1年待つ、と言ってくれた採用担当者の好意を
自分は裏切った。


だが、その道に進んでいて、
今、満足した人生を送っているか、と問われれば、
とてもそんなことを言い切れる自信はない。


あの頃の夢と、今の自分は、
奇しくも「法」という一本の糸でつながっている。


法を創る側の人間と、法を使う側の人間、
隣の芝はいつも青い。
どちらの仕事が充実したものかなんて、
誰にもわからない。


少なくとも今の自分は、
自分の仕事にささやかな誇りをもって日々過ごしていける、
だから、そんなに悪い人生じゃない。
(と、自分に言い聞かせている。)


卒業して一番正解だったことと言えば、
毎月、細々と稼いだバイト代が一瞬にして消え去り、
月末になると預金残高がマイナスになる日々を繰り返していた自分が、
給料日前でも三食腹いっぱい食えるようになったことだろうか(笑)。


入社当時、会社の研修寮にダンボール一つで乗り込んだ自分の部屋に、
いまや所狭しと並んでいる本の山を見るたびに、
学生の頃これだけ恵まれた環境で勉強できていたらなぁ・・・
と、(授業にさえ足を運ばなかった自分の非は棚に挙げ)
ふと、つぶやいたりもしている(苦笑)。


ま、いずれにせよ、
入社式当日の午前4時まで悪友たちと深酒して、
そのまま入社式に直行した自分が*4
10年近く“まっとうな”*5社会人として
生き延びているのだから、
世間の水は、まじめな学生が思っているほど辛くはないはずだ(笑)。


以上、これから新生活に挑もうとしている皆さまの武運長久をお祈りしつつ、
今日のところは、この辺で・・・。

*1:あぁ、自分のときは、ソフトボール大会だの、「山中行軍」(“同期の結束力を強めるため”夜を徹して山の中を歩くイベント(笑)。何せトコトン体育会系・・・)だのがあったなぁ、とか、毎朝体操(今ではすっかり忘れたが)と接客用語の唱和、お辞儀は45度、社内の最高権力者の“語録”の暗記&小テスト、そして毎晩書かされるレポートという名の“感想文”。今となっては、よいブログのネタ思い出だが。(想像がつかない方は「いいひと。」の最初の方を読むことをお勧めします。)

*2:道垣内弘人「試験の後で」法学教室306号1頁(2006年)。ちなみに道垣内(弘)先生はこの記事の中で、「勉強をする上での科目全体の体系的把握」の重要性を説かれ、その上で「自転車操業的な試験勉強だけで済ませるのではなく、試験の後に勉強することこそが重要なのだ」、という趣旨を述べられている。学生時代にまったくもって実践できなかった自分が言うのもなんだが、大変有益なご指摘だと思うので、学生の皆様はぜひご一読あれ・・・。

*3:当時、英米法、フランス法、ドイツ法が選択必修、かつ唯一の4年次配当(7学期)だったので、これだけ残して留年するパターンが多かった。

*4:社長の挨拶時に、ひたすらトイレに駆け込んで・・・以下略)

*5:注:あくまで自己評価(笑)

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