人事の妙。

“長官が二人?”のニュースで持ちきりだった最高裁だが*1
さらに驚きの人事情報が。

「政府は3日の閣議で、15日に定年退官する町田顕最高裁長官の後任に島田仁郎最高裁判事を指名することを決定した。滝井繁男・最高裁判事も30日限りで定年退官するため、新たに涌井紀夫・大阪高裁長官と、大阪弁護士会所属の田原睦夫弁護士最高裁判事に任命することを決めた。近く発令される。」(日経新聞2006年10月3日付け夕刊第2面)(太字筆者)

田原弁護士と言えば、
言わずと知れた倒産法実務の第一人者であり、
各種法律雑誌で名前をお見かけしない週がないくらいのご活躍を
なさっておられる方である*2


大阪弁護士会所属、ということで、
前任の滝井繁男裁判官の後継に推されたのであろうが、
滝井裁判官が大阪弁護士会会長、日弁連副会長という
弁護士会の要職経由で最高裁に入られたのと比べ、
弁護士会の活動よりも、専門分野でのご活躍が目立っていた田原弁護士が
今回最高裁判事になられた、というのは、素人目で見ると意外感があり、
時代は変わってきたのか、
と感じさせられるニュースであるのは間違いない*3


これで昨年1月から、最高裁に入られている才口千晴裁判官に続き、
東西の倒産法の大家が最高裁判事として名を連ねられるわけで、
これは近年改正が相次いだ倒産法制シフトなのか・・・と、
勘ぐりたくなるわけでもあるが、
果たして真相はいかに。


いずれにせよ、これで新破産法下の論点について、
示唆に富んだ法廷意見が示される可能性も増すのではないか・・・
と思ったりもするのであるが、どうだろうか?
今後、特別抗告で果敢に挑む実務家の挑戦に期待したいところではある。


なお、最高裁判事の交代は、
5月の濱田邦夫判事→那須弘平判事とあわせてこれで3人目。


平成16年以降、大幅な入れ替わりが続いてきた
15名の合議体も、これで暫くは落ち着くことになりそうで*4
司法制度改革の真っ只中にあって、
どのような判例形成の流れができていくのか注目したい*5


ちなみに、

「3日の閣議は、龍岡資晃・前福岡高裁長官が9月27日に定年退官したのに伴い、北山元章・さいたま地裁所長を高裁長官に任命することも決定。最高裁は北山氏を福岡高裁長官に充てることを決め、3日付で発令した。」

知財判例マニアにとっては、
ついこの前まで“身近”だったお名前を見かけて*6
「おぉ・・・」と思った自分・・・orz

*1:個人的には、泉徳治裁判官でなかったのが残念・・・(笑)。

*2:現在でも、ジュリスト誌『新破産法の基本構造と実務』の座談会にレギュラー出演中。

*3:濱田邦夫・前最高裁判事あたりからこの流れは始まっていたのかもしれないが、このまま行くと、いずれは会社法専門の弁護士や、知財専門の弁護士の先生が名を連ねても不思議ではない。ちなみに次の交代があるのは2008年9月(才口千晴判事(東京弁護士会出身)が定年となる)。

*4:来年定年を迎えられる裁判官は裁判官出身の上田豊三判事1名のみ、である。

*5:町田長官の定年退官により最古参となる横尾和子判事が、現在在任中の15名中3番目にお若い、というのが一つのカギを握ることになるかもしれない(定年まで在職されるとなると、実に10年にわたって判例形成に影響を与え続けることになるわけですな・・・)。

*6:といっても、筆者は、味の素職務発明訴訟の和解の際などにお名前が出てきていたことくらいしか思い出せないのであるが・・・。

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