月曜日の日経朝刊1面を飾ったこのニュース。
「東芝はノートパソコンに搭載したソニー製リチウムイオン電池の自主回収・交換問題で、電池を供給したソニーに損害賠償を請求する方向で検討に入った。回収による製品イメージ悪化や販売機会の損失について補償を求める方針だ。富士通も賠償請求の検討を始める見通し。大手企業間のトラブルは損害額や補償額を明らかにしないであいまいに解決することが多かったが、株主の監視の目が厳しくなる中で、賠償請求などの手段が広がる可能性がある。」(日経新聞2006年10月16日付け朝刊・第1面)
本気かよ東芝・・・、と思ったのは筆者だけではあるまい。
なぜなら、東芝は9月1日にいったん、
「自社製パソコンに不具合はない」と表明しているのであって、
今回の回収はあくまで「顧客に安心して使ってもらうため」に
自主的に行ったものに過ぎないからだ。
確かに一部のパソコンでは加熱・発火事故が発生しているものの、
東芝製パソコンに関してはそのような事故は生じていない。
そのような状況下において、
果たして東芝側が主張するような逸失利益やブランド価値低下相当分の
損害賠償請求が認められるのか、
正直心もとない状況といわざるを得ないだろう*1。
ソニーとしても、安々と妥協してしまうと、
他のメーカーにも当然の如く火の手が波及していくから、
回収費用等の直接損失分はともかく、
逸失利益までおいそれと気安く払うとは思えない。
記事では、
「経営陣が株主の監視の目の厳しさを強く意識してきたことの表れ」
などと肯定的に評価しているようだが*2、
別にこれまでの企業とて、
サボるために馴れ合いをしていたわけではなかろう。
水面下で火花を散らしつつも、
最終的には業界全体でぬるりとまとめた方が、
訴訟で無駄なコストをかけないですむ、
というところから、これまで曖昧な解決が図られてきたのであって、
実際、訴訟に係るもろもろのコストを訴訟でペイできるか、
ということを考えると、
当の企業側にとって、というだけでなく、
株主利益の観点からも、
曖昧決着には十分な実益があったように思われる。
訴訟で白黒付けるのは決して嫌いじゃない筆者でも、
法務部員として見解を求められたら、
消極的な回答をせざるを得ないこの案件。
個人的には、東芝の会社としての方針が
既に出されているとも考えにくく、
案外東芝のエライ人が息巻いていたのを
そのままアドバルーンで記事にしてしまっただけなのかもしれないが、
それにしても、何とも解せない話だと思うのである・・・*3。