「刑事罰」の違和感

ウィニー開発者に有罪」のニュースについては、
既にいろいろなところで論じられているところだし、
実際に判決文を読んでみないことには評価しがたい面もあるので、
とりあえず今日のところは細かいコメントはできないのだが、
簡単な感想としては、
いくら罰金刑とはいえ、「有罪は有罪」なのであって、
訴追側と弁護人側の主張の真ん中をとった、
などと軽率にいうことはできない、
ゆえに、明確に無罪としなかった本判決には、
結論としてはやはり重大な問題がある、といったところだろうか。


当事者対立構造をとっているとはいえ、
刑事訴訟においては、民事訴訟のように
当事者の衡平を考えて落としどころを見出す、という作業は
極めて困難になるのだから、
権利者側とユーザー側との間の繊細な利益衡量が必要となる
本件のような事案を、そもそも刑事事件として扱うこと自体が
失当だったのではないか、と思う。


そして、この日、さらに実務者を震撼させたニュースが↓。

「大手旅行会社、JTBが、写真家に無断で旅行パンフレットに風景写真を掲載、配布したとして、警視庁生活経済課は13日、同社本社(東京都品川区)や、同社子会社JTB東海(名古屋市)など関係先計17ヶ所を著作権法違反の疑いで家宅捜索した」(日経新聞2006年12月13日付夕刊・第23面)

①写真家との契約期間が切れていたにもかかわらず、
JTBがパンフレットに写真を掲載していた。
          ↓
②写真家側がJTBに対価の支払を求めて交渉を行ったが、
埒があかなかった。


ということを繰り返した結果、
この日の家宅捜索に至ったようであるが、
このような事案は、純然たる権利紛争というよりは、
むしろ知的創作から生まれた成果物の利用をめぐる利益紛争、
というべきであり、
当事者の交渉(ないし民事上の法的手続き)で解決すべき問題であって、
警察がしゃしゃり出てくるような話ではない*1


Winnyの判決の日にあわせて家宅捜索を行うあたり、
何か意図的なものを感じるこの事件、
JTB自体に脇の甘さがあったのは否めないのも確かだが、
当局が一罰百戒的なガサ入れで
“努力”をアピールしようとしているサマを見るのは、
正直言って不快でさえある。


そんなパフォーマンスをする余力があるのであれば、
もっと国民生活に重大な影響を及ぼす事件の解決に
心血を注いで欲しいと思うのは、筆者だけだろうか?

*1:そもそも風景写真のような著作物については、常に著作物性を認めうるか否か、という問題が付きまとうのであるが、そういった細かいところにまで思いを馳せられる人間が警察の内部にそうそういるとは思えない。