若き勇者を称えよ

今日の中山記念で、yaeno_29先生も一押し(笑)*1ローエングリンが勝ったそうで。


競走馬としての寿命が長くなる傾向にある今日この頃*2とはいえ、伝統のG2戦(しかも旬の勢いが試される2000m戦)で8歳馬が勝ってしまうのだから、競馬というのはまだまだ奥が深い。


ローエンといえば、初めてのG1が「3歳」で出走した宝塚記念という大物(しかも堂々の3着)、しかも1600〜2000の重賞なら危なげなく逃げできっちり連に絡む、という安定感を見せてくれるのに、期待されたG1になると、なぜか“ツインターボ状態”になってしまう稀有な馬。


前に中山記念を勝った2003年などは、後藤浩輝騎手と組んで年明け以降重賞3戦2勝、2着1回、と絶好のG1チャンスだったのだが、1番人気の安田記念アグネスデジタルの強襲に屈し、挽回を図った秋の天皇賞では、物議を醸した“後藤vs吉田戦争”の餌食となった*3


その後も結局タイトルを取れないまま、ズルズルと現役を続けていた感があっただけに、ここに来て、実況アナもノーマークの中(笑)、爽快な逃切り劇を演じたことに素直に驚いている(できればもう一花、二花、咲かせてほしいところ・・・)。



ところで、今日、ここで取り上げたいのは、この日引退した一人の騎手の話。

「24日の阪神12R終了後、同競馬場ウイナーズサークルで常石勝義騎手(29)の引退式が行われた。常石は04年8月28日、小倉の障害競走で落馬し、脳挫傷などで意識不明の重体に陥った。一命を取り留め懸命にリハビリに励んできたが、ドクターストップにより現役復帰を断念。常石は「ファンの声援のおかげで、ここまで頑張ってきました。これからは生きることの素晴らしさと、競馬の面白さを伝えていきたい」と、第2の人生への意気込みを語っていた。通算成績は1503戦82勝。重賞は3勝で、03年にビッグテーストで中山グランドJ(J・G1)、オースミコスモ関屋記念(G3)、97年にタケイチケントウで小倉3歳S(G3)を制している。(日刊スポーツWeb)

http://www.nikkansports.com/race/p-rc-tp0-20070225-161657.html

常石騎手といえば、福永祐一和田竜二高橋亮、双子の柴田、牧原(現姓・増沢)、細江といった騎手(元騎手)たちと並ぶ1996年デビュー組(俗に言う花の12期生)。


筆者自身相当コアに競馬を見ていた時代だったこともあって、デビュー当時の常石騎手のことは良く覚えている。順調に勝ち星を積み重ねているさなかの落馬事故、脳挫傷で意識不明の状態からの奇跡の回復、そして初重賞制覇、と、その過程で見舞いに足を運んでいた12期生のエピソードなども含め、当時の優駿誌あたりを引っ張ってくれば、このあたりの話題には事欠かないはずだ。


その後、ジャンプレースを中心に活躍し、念願の初G1勝利を挙げるまでになったのに、2004年夏の小倉で2度目の大事故。


並みの人間なら、恐怖心でとても馬になんか乗りたくなくなるだろう、と思えるような状況下でも、復帰を目指して必死にリハビリに取り組んでいる、というニュースを聞いて、そんな彼の勇気に心から感銘を受けたものであった。


残念ながら、丸2年以上の必死のリハビリの末、ドクターストップにより引退、という結論に至ったようだが、ここまでの11年、度重なるケガにもめげず挑戦し続けた勇気は、称えられてしかるべきだろう*4


今後どのような道に進まれるのか、筆者は全く存じないのだが、「生きることの素晴らしさと、競馬の面白さを伝えていきたい」ということで、ご活躍に期待したいと思う*5


(追記)
安全対策には細心の注意を払っているはずであるにもかかわらず、悲しいことに、このような事故は何年かに一度必ず起きてしまう*6。24日(土)にも阪神の第4Rで石山繁騎手が落馬、意識不明の重傷を負っているという。今は一刻も早い回復をただただ願うのみである*7

*1:http://d.hatena.ne.jp/yaeno_29/20070225/1172399477#tb

*2:気が付きゃツンデレスイープも現役続行してるし・・・(苦笑)。

*3:単騎逃げが有力視されたローエンに、吉田豊騎手騎乗のゴーステディ(結局大差しんがり負け)が絡み、無謀にも前半壮絶に競り合ったため(1000mラップは何と56秒9!)、結果、ローエン自身も大暴走失速劇を演じることになってしまった、という何とも気の毒なレース。後藤騎手と吉田騎手が当時“公然の不仲”関係だったこともあって、レース後は「違う目的でレースに参加してたヤツがいた・・・」的な不穏な発言もでたという。

*4:ありきたりな表現で恐縮だが・・・。

*5:なお、『花の12期生応援サイト』に常石騎手の応援ページ(http://homepage1.nifty.com/pontaclub/top-tsuneishi.html)を発見したのでご関心のある方は参照されたい。

*6:ちょうど競馬にはまりだした頃、玉ノ井健志騎手、そして天才・岡潤一郎騎手の死亡事故に大きなショックを受けたことを思い出す。

*7:こんな大事故が起きているにもかかわらず、一般メディアが取り上げたのは、同じレースで“逃げ出した”ノボリハウツー号(よりによって今週引退の瀬戸口調教師の管理馬・・・)の話題ばかりであった。騎手よりも馬が主役の世界とはいえ、いかがなものかと思う。

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