17日の日経新聞記事によると、
「安倍晋三首相は16日の経済財政諮問会議で、公務員制度改革の焦点である天下り規制について「各省のあっせんはやめる。機能する新・人材バンクをつくるということで法案をまとめてほしい」と渡辺喜美行政改革担当相に指示した。行革省は今月中の関連法案の国会提出を目指すが、自民党内には反発が根強く調整は難航しそうだ。」(2007年3月17日付け朝刊・第1面)
とあるが、民間企業の第一線でバリバリに活躍してきた人でさえ、50歳を過ぎてからの再就職はそうそう容易にできるものではない、ということを考えると、単に「新・人材バンク」を作ったからといって、うまくいくものではない、ということは容易に想像が付く。
そもそも“天下り”による再就職の慣行は、そんなに悪いことなのか?
本来お国とは何の関係もない民間企業に安易に天下りさせるのは確かに問題だとしても、各省庁が主管する財団法人などは、やっていること自体、国策の延長のようなものであることが多いわけだし、民間で言えば一種の“関連企業”といって差し支えない位置づけの団体であろう。
だとすれば、定年前に役職者が関連企業に出向・転籍する、という民間企業の慣行と、定年前に主管の財団法人に“天下り”する慣行とどこが違うのか、丁寧に説明していただかないと、筆者のような凡人には何が問題なのか、容易に理解することができない(笑)。
天下りを受け容れることで、財団法人の本来の趣旨目的が捻じ曲げられていたり、運営が非効率になっているということであれば、それは天下り規制によって対処するよりも、団体そのものにメスを入れるというのが本筋であるし、不要な団体をさっさと統合・解散させてしまえば、省庁が再就職をあっせんする、という現在のシステムの下でも、いずれあっせん先は失われていくのだから、問題はないといえるのではないだろうか?
需要と供給が綺麗にマッチングするような最適な人材が仮にいたとして、その方が転身を遂げるために、いちいち人材バンクを通じて・・・などという迂遠なことをする方が却って不効率であるようにも思われる*1。
そして何より問題なのは、官邸の案からは、ただ「目玉」としての「改革」をやりたいという意図しか伝わってこないことにある。これまで“天下り”のあっせんが行われてきたのはなぜか、制度趣旨に遡って考えた痕跡がみえにくいのだ。
筆者とて、天下り規制が実行されたら直ちに「上級官僚の方々が在職中から自らの本来の職務よりも民間企業とのコネ作りにいそしむようになる」とまでは思っていない。
だが、ほとんどの暢気な“民間人”には無縁の激務と、いつの世も好景気とは無縁の薄給を甘受し、国のために数十年働いてきた国家公務員(しかも志半ばにして「タイムオーバー」により中央省庁で働く機会さえ奪われてしまう)から、ささやかな“ボーナスステージ”のチャンスを奪うのが、果たして合理的な施策といえるのか、自分は大いに疑問を感じている。
世の人々のやっかみを利用した“目玉施策”で気勢を上げるのは結構だが、国家公務員が民間の大企業にもとる“冷たい”処遇しか受けられなくなるような制度を導入することが、真に国家利益につながるのかどうか、官邸周辺の人々にはもう一度よく考えていただくようお勧めしたい。
まぁ、自分の場合、官にいようが民にいようが、後先考えずに再就職のあっせん蹴飛ばして適当な人生送るだろうから、あまり影響はないのだけど。