当たるも八卦。

いよいよ、第2回の新司法試験の試験日が目前に迫ってきたようである*1


こんな時に暢気に人のブログをみている暇な受験生もいないとは思うのだが、せっかくだから、ここは一つ、2日目(16日)に予想されている論文式試験(選択科目・知的財産法)の予想でもしてみようかと*2


なお、本ブログの愛読者の方はもうお気付きのことと思うが、筆者は占星術師でもスピリチュアルカウンセラーでもないし、筆者が何か予想を立てると、すべからく外れるのが開設当初からの“お約束”であるから、くれぐれも出題されなかったからといって、筆者を“細●和子よばわり”することのないよう切にお願いしたい(笑)。

大問1について

昨年は、(1)「特許の実施(使用)概念」(+間接侵害の成否)という基本的論点と、(2)「均等論」という花形論点の組み合わせだった大問1(特許法)。


今年も、一つ大きな論点をドカンと出して、それに付随する形で基本的な概念や定義を述べさせる問題が出題されることが予想される。


・・・で、いろいろと考えてみたのだが、特許法プロパーの論点で、「新司法試験の」レベルでの使用に耐えうるようなものを探すのは、実は結構骨が折れる。


細かい条文操作で、出願や補正の手続きについて論じさせるのは弁理士試験だけで十分、といったところだし、かといってクレーム解釈の中身にまで突っ込んだ議論をやらせようと思ったら、それなりにボリュームのある(架空の)明細書でも用意しないといけなくなるから*3、試験委員の先生方もさすがにそれは遠慮するはずだ。


また、普通の六法と違って、この分野の法改正は頻繁に行われているから、「職務発明」のような最近のトピックについて出題することすらままならない*4


日立職務発明訴訟を下敷きにしようとすれば国際私法、審決取消訴訟の構造論を論じさせようとすれば民事訴訟法・行政(訴訟)法、と、知財プロパーの議論に留まらない展開を覚悟しなければならないのも、出題に際してはネガティブな要素になるのではないかと予想される。


そう考えていくと、今回出題が予想される分野は自ずから絞られるのではないか、というのが筆者の読みである。


まず本命は、古くは「BBS事件」、最近でも「インクカートリッジリサイクル事件」で大合議判決が出されている「権利消尽」に関する事例問題だろう。


インクカートリッジ事件自体、物の発明と方法発明の双方について権利消尽が問題になっていた事案だったから、そのまま事例問題形式に置き換えるだけでも、相当深いレベルでの特許法の理解を問うことができるのは間違いないし、リサイクルと消尽、のテーマに限って言えば、未だ最高裁判決が出されていない状況で、「アシクロビル」事件や「写るんです」事件など、個々の事例に応じた様々な解法が提示されているところだけに、かえって特定のパターンに束縛されない自由な思考力を試すことも可能となる。


そう考えると、これが今回の出題にはうってつけの中身、と考えられるように思われるのである*5


続いて挙げるとすれば、「冒認出願」に関する論点だろうか。


これまた「特許を受ける権利」とは何ぞや、という本質論に遡って考える契機を与えてくれるに十分な素材だけに、マイナー論点とはいえ、決して出題されてもおかしくないように思っている。


なお、どのような問題になるとしても、特許の実施概念や間接侵害といった争点については、毎年花形論点に付随して出題される可能性はあるから、準備を怠ってはならない、というのは言うまでもないことだろう。

大問2について

去年の出題やその後公表されている出題趣旨などを見る限り、著作権法に関する大問2は、細かい論点を混ぜ合わせて正確な理解を試す、というポリシーで問題が作られるようであるから、これについては、万遍なく知識をカバーしておくほかない、というのが率直な感想である。


ただ、強いてあげるとすれば、「翻案」をめぐる問題(翻案権侵害の成否+同一性保持権侵害の成否)で、これについては少々ヤマをかけても良いのではないか、と思ったりもするのであるが・・・。



なお、たかが「選択科目」とはいえ、2日目からコケてしまうと、その後の日程に響くことは間違いないところで、受験する方にとっては悩ましいところではないかと思う。


「どうせ問題文読むだけ」の筆者ではあるが、計5日間(うち1日は休養日)の試験と格闘せざるを得ない受験生の方々には心より同情せざるを得ない、ということをここで付言しておくことにする。

*1:日程については、こちらを参照(http://betweenweb.jp/grad/law/newexam/index.html)。

*2:昨年の試験問題については、上智大の駒田准教授による丁寧な解説をネット上でも見ることができる(http://pweb.sophia.ac.jp/~komada-y/bar_exam.pdf)。

*3:もちろん一行問題で論じさせることもできるのだが、そのような作問が実務家選考試験たる新司法試験の場に添うものかどうかは疑わしい。

*4:これまでの判例法が全て改正前の条文を前提に組み立てられているため、現行法ベースの作問をするのは難しいように思う。

*5:個人的には、BBS事件とフレッドペリー事件を対比させて、特許の消尽と商標の消尽の理論構成の違いでも論じさせれば良いではないか、と思ったりもするのであるが、さすがにそうなると事前に予告されている試験範囲を逸脱することになってしまう可能性もあるから、なかなか難しいのかもしれない・・・。

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