出版社、受難の時代。

ここ数日、新聞で報道される著作権がらみの判決。
いずれも敗訴したのは出版社である。


1つ目は、「ドラえもん」最終回をめぐってつい先日物議を醸したばかりの小学館

「有料データベース作成準備のための無断複製で写真の著作権を侵害されたなどとして、フリーのカメラマンが小学館を相手取り約3200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。清水節裁判長は「準備段階での複製行為でも著作権侵害に当たる」として、小学館に対し紛失フィルムの損失分も含め328万円の損害賠償を命じた。」(日本経済新聞2007年5月31日付・第38面)

まだ判決文を読んでいないので何ともいえないのだが、大塚先生のブログ速報((「駒沢公園行政書士事務所日記」)によると、小学館が行ったのは、「社内での利用目的でのデジタルデータ化(及びハードディスク、CD-ROMへの保存)」だったようで(http://ootsuka.livedoor.biz/archives/50826714.html)。


ドラえもん」の件もあるだけに、“ほら見たことか”的な感想を抱く方も少なくはないのだろうが、実務側から見れば、これで著作権侵害を問われてしまうのは何とも気の毒な気がしてならない。


また、翌日の朝刊では、以前本ブログでも紹介した「東京アウトサイダーズ」事件の控訴審判決が紹介されており、これまた角川書店が敗訴している。

「単行本に自分が撮影したスナップ写真が無断掲載されたとして、女性が出版元の角川書店と著者に販売差し止めや損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が31日、知的財産高裁であった。中野哲弘裁判長は「スナップ写真にも著作権がある」と認定。販売差し止めを認めた一審・東京地裁判決を支持、損害賠償額を45万円から85万円に増額した。」(2007年6月1日付朝刊・第38面)


以前にも書いたとおり(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20070123/1169575046#tb)、この件も、出版社でなければ「過失」が否定されても不思議ではないくらい気の毒な事案なのだが、なぜか損害賠償額が増額されてしまっている。



時に権利者として振舞う一方で、他の著作権者(特に個人)との間では常に攻撃される要素を抱えている出版社。


いわば「著作権のプロ」として、要求される注意義務が一般事業者に比べると相当程度高いように思われるし、そうかといってリスクを冒すことで爆発的なリターンを得ることができるわけでもない。


刺したり刺されたり、つくづく因果な商売だ、と、担当者が頭を抱える姿が思わず目に浮かぶ・・・。


なお、判決文への細かいコメントについては、また日を改めて行うことにしたい。

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