泥仕合

以前紹介した、劇作家の鄭義信(チョン・ウィシン)氏と「新宿梁山泊」の争いだが*1、今度は劇団側が反訴(別訴?)を提起したようだ。

「映画「月はどっちに出ている」などの脚本で知られる劇作家の鄭義信(チョン・ウィシン)さんから著作権法違反を理由に作品の上演差し止めを求められたのに対し、劇団「新宿梁山泊」(金守珍代表)は27日、鄭さんを相手取り、劇団に作品の上演権があることの確認を求める訴訟を東京地裁に起こした。」(日本経済新聞2007年8月28日付朝刊・第42面)

ここで問題になっているのは、鄭さんが劇団に所属していた時に書かれた戯曲(「人魚伝説」と「それからの夏」)で、劇団側は、「作品は劇団員全員の共同著作物で劇団に上演権がある」と主張しているということだが、仮にこれらの戯曲が共同著作物であって、劇団側に上演権が帰属するとしても、著作権法には、

第65条
2 共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することはできない。

という悪名高い規定があるので、鄭氏側に「黙示の合意」が認められなければ、実際に上演行為を行うことは不可能なはずである。


ゆえに、この記事を読んだだけでは、ここで確認の訴えを起こすことの意義が分かりかねるのであるが*2、あえて訴えを提起して公表するくらいだから、何らかの意図はあるのだろう。


個人的には、職務著作の成立を認めてしまえばいいんじゃないの?と思ったりもするのであるが、それが演劇人にとって望まれる結論がどうかも疑問なわけで、そのあたりは何とも微妙*3


このまま泥仕合に突入していくのか、それとも裁判所のナイスジャッジで円満解決を迎えるのか、興味の尽きない話題ではある。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20070707/1183856482#tb

*2:もちろん共同著作物だと認定されれば、鄭氏側が単独で差止請求権を行使することもできなくなるが、それは本訴の方で主張立証すればよい話であって、あえて迂遠な確認請求を行う意義は良く分からない。

*3:過去に無許諾上演され続けていた経緯があれば、黙示の許諾の成立を認める余地などもあるかもしれない

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