オークションと著作権

数年前に、インターネットを使った公売オークションでの画像掲載をめぐって、横浜市著作権管理事業者が争った訴訟が話題となったことがあるが、今度はよりプリミティブな、「オークションカタログ」が問題となっている。

「女性洋画家として初の文化功労者となった三岸節子氏の遺族が、無断で同氏の絵画作品をオークション用カタログ(有料)に掲載されたとして、オークション会社4社を今週中にも東京地裁に提訴する。著作権侵害で損害賠償を求める」(日本経済新聞2008年11月5日付朝刊・第39面)

このカタログにおいて、画像がどの程度の大きさか、どの程度鮮明に原画が再現されているのか、といった点は記事からは分からないのだが、訴えられた側としては、「引用」要件該当性を主張して争うことが考えられよう。


また、絵画の取引に付随して当然に想定される使用、だとして、“黙示の許諾”構成を取ることも考えられるかもしれない*1


ちなみに、訴えられた事業者の一つである毎日オークション(東京・江東)は、

「掲載は事実だが、無許諾掲載は業界では慣例。訴状を見てから対応は考える」(広報担当)

とちょっと踏み込んだリアクションをしている。


いかに“慣行”があるといっても、それが法の趣旨に沿ったものだと裁判所が認めない限りは、慣行に則った取扱いが適法なものとして扱われる可能性は低いのだが、このあたりの実態を、被告側がどのように主張に取り入れ、裁判所がそれをどのように評価するのか、が注目される。


実体判断が示されれば、その射程は「カタログ」のみならず、「ネットオークション」やその他の媒体での取引対象物の掲載行為にも及ぶ可能性があるから、影響は決して小さくない。


もちろん、いつの間にか和解で事案がひっそりと消えてしまう可能性はあるし、その可能性の方が高いように思える事案ではあるのも事実なのだが・・・。

*1:個別具体的な判断に左右されない、という点から言えば、こちらの構成で認められた方が、取引の円滑化に資することになると思われる。

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