フィギュアスケートGPシリーズの第2戦、スケートカナダの女子フリー。
前日SPで出遅れた浅田真央選手がフリーでトップに立ち、逆転でGP通算4勝目。
この結果だけ見たら、今季も順風満帆のように思われるのだが・・・。
少なくともこの日の滑りは、あまり感銘を受けるものではなかった。
元々、今年のフリーで使われている「幻想即興曲」は、大きな盛り上がりがない平板な曲だけに、それに合わせた滑りで場内を盛り上げるのは容易なことではない。
トリノ五輪のシーズンに日本選手権までフリーで使っていた荒川静香選手が、結局本番直前でこの曲をあきらめ(SP用に切り替えて使った)、フリーは「トゥーランドット」を使ったのも記憶に新しいところだ*1。
それゆえ、本来であれば、シニアスケーターとしてのキャリアが豊富とはいえない浅田選手の果敢な挑戦には、賛辞を送るべきなのだろうが、今の段階では「こんな曲でも滑れるんだ、凄いね」という印象を与えるための実験の域を出ていないように思えてならない。
ステップやスピンという個々の要素のレベルをいかに引き上げても、村主選手のような表現力を発揮するにはまだ浅田選手は若すぎるし、最大の売りであるジャンプも、この日はあまりに手堅く行き過ぎていて迫力を欠いていた*2。
シーズン終盤になれば、もう少し完成度も深まってくるのだろうが、それでも芸術的な観点からみれば限界があるように思われる。
少なくともここまでのグランプリを見ると、“過渡期”なのはどの選手も同じようだから、“実験”のままで世界タイトルまで奪っていってしまうのかもしれないが、“逆襲のチャルダッシュ”のような感動的なシーンを演出するのは、今季は難しいのではないか。
それより、この日のフリーで素晴しかったのは中野友加里選手。
終盤で難易度の高いコンビネーションジャンプをガンガン飛んでくるし、最後は華のドーナツスピンで場内を拍手の渦に巻き込む。
結果、パーソナルベストのスコアをたたき出し、フリーの技術点だけ見れば、浅田真央選手をも上回ってSP4位から2位まで巻き返す大健闘。
残念なのは、中野選手の場合、国内でも国外でも演技点が伸びないこと。
元々、国内選考で点数が伸びないのは、スポンサーに配慮した政治的陰謀だという説もあったのだが、外国の競技会でも同じような結果になるということは、玄人の目から見たときに足りないものがあるということなのだろう*3。
とはいえ、どんなに厳格に審査しても、主観が混ざることは否定できない採点の世界。浅田、安藤に次ぐ世界の3番手、という評価が点数を低めに抑える遠因となっている可能性もないとはいえない。
年齢的にも競技生活のピークを迎えようとしている今季の中野選手。
もう一段ブレイクするためには、グランプリファイナルへの進出と、ファイナル&日本選手権で浅田、安藤両選手よりも上位に来ることが、必須条件になるだろうが、それらのハードルをクリアした時、来年の世界選手権でタイトルをとることも夢ではない。
そんな期待を抱かせてくれる、この日の滑りであった。