積み重ねたものが、報われる日はきっと来る。

前日の男子とはうって変わって、最終グループに日の丸を背負った3選手が名を連ねた世界フィギュア女子シングル。

最初に滑ったSP首位発進のレオノワ選手*1が、鬼気迫る演技でメダル確実なスコアを叩き出し、コストナー選手がこれまでの十年のうっ憤を晴らすかのような最高の滑りを見せる中、冴えないパフォーマンスが続いた日本勢だったが、最後に登場した鈴木明子選手だけは、何とか意地を見せた。

出だしの3回転ルッツに始まり、ダブルアクセル+3回転トゥループのコンビネーション、3回転フリップ、とGOE加点付きの美しいジャンプを積み重ね、前半で独自の世界を作り出す。

後半に入ってジャンプの安定感が落ち、大詰めに差し掛かった終盤のコンビネーションで出だしのルッツがすっぽ抜けたことがメダルの色を微妙に変えてしまった感もあるが、それでも最後まで鈴木選手らしさを失わないまま滑り切り、叩き出されたスコアはフリー2位。
SPの出遅れを巻き返して見事に銅メダル、という成果を残した*2

思えば、今シーズン、世界の舞台で日本勢の主役を張り続けたのは彼女。

五輪の2009-2010シーズンで一躍脚光を浴びながらも、翌シーズンは新鋭・村上選手に世界選手権代表の座を奪われ、今シーズン、NHK杯優勝、GPファイナル2位(日本人最高)という素晴らしい結果を残しても、“いろいろあった浅田選手”の陰にどうしても隠れてしまう・・・、そんな地味な存在の選手が、27歳という年齢で、世界選手権の表彰台に立つ、という偉業を成し遂げた、というのがいかに素晴らしいことか。

おそらく彼女の場合、来シーズン以降も一年一年が勝負の年になるだろうし、2シーズン後に五輪の舞台に立つ姿も、今の段階ではとても思い浮かべるのは難しいのだけど、それでも毎年、必死にファンに応援させたくなる・・・そんな力が彼女の滑りにはあると思う。


一方、SP2位の勢いはどこへやら、ジャンプで細かいミスを連発し、流れに乗り切れないまま悔し涙にくれた村上佳菜子選手と浅田真央選手の姿は対照的だった。

特に、浅田真央選手は、ショートプログラム以上に、そして、今シーズンの中でも最悪に近い滑走。
最初のトリプルアクセルが1回転になってしまったのを皮切りに、3回転ルッツはエラーエッジ、フリップは2回転、最後のループもすっぽ抜けて1回転・・・と、ジャンプが全く決まらない。

スピンとステップをほぼ完璧にレベル4で揃えたのはさすがだが、それでも、フリーの技術点45.01点、というのは、全24選手中15番目で、タラソワコーチ時代に培ったスキルとこれまでの実績がモノを言った演技構成点(優勝したコストナー選手に次いで2番目のスコア)がなければ、もっと悲惨な結果になっていたことだろう。

同じ偶像にすがりたがるメディアは、相変わらず、「真央、まさかの・・・」とかなんとか見出しを付けたがるのだが、彼女が世界選手権を6位で終えるのは昨年に続き二度目のこと。

シーズン中の滑り全体を通して見ても、お世辞にも状態がいいとは言えなかった浅田選手にとっては、この辺が今の「定位置」ともいえるわけで、彼女をあたかも“日本の象徴”であるかのように褒めそやすメディアのあり方が、本当に正しいのかどうか、そろそろ検証されるべきときに来ているんじゃないか、と自分は思っている。

元々、日本の女子のフィギュアスケート選手にとって、10代最後の1〜2年から、20代に足を踏み入れたばかりの時期、というのは、結構鬼門で、鈴木明子選手のその頃のエピソードは今さら語るまでもないし、あの天才・荒川静香でさえ、モチベーションを失いかけていた時期と重なる。

浅田選手の場合、それでも、日本選手権をとって、五輪に出て、世界選手権にも出て・・・と表舞台で活躍し続けているから立派の一言に尽きるのだが、それゆえ、心身を休める暇もなく、結果を意識し過ぎて悪循環に陥っているんじゃないか、という懸念もあるわけで・・・。


一定の才能を持っている選手であれば、積み重ねた努力が華開く時が、いつかは来る、と自分は思う。

シニアデビューから11シーズンを積み重ねて、ようやく世界選手権の表彰台に辿りついた鈴木明子選手しかり、トリノ五輪前年に初めて世界選手権の表彰台に立ってから、浮き沈みを繰り返して7年越しで初優勝を飾ったコストナー選手しかり。

そして、前回の五輪シーズンに2度目の世界女王のタイトルを取った後、明らかに伸び悩み、もがいている浅田選手にも、もっと上の、4年に一度の舞台で輝ける時は、きっと来るはず*3

だからこそ、五輪が絡まない次のシーズンくらいは、彼女から“エース”の看板を外してあげて、そっと見守るくらいのスタンスでいいんじゃないか、と思うのだけれども・・・。


願わくば自分が、浅田選手が次に咲かせる大輪の花の、そして、絶対的な女王としての歴史が創られる瞬間の目撃者にならんことを・・・と今はひたすら願うのみである。

*1:最近あまり見ていなかったせいもあるが、このイメージチェンジには驚かされた。これもモロゾフ効果か・・・。

*2:技術点は全体の2番目、演技構成点は全体の3番目、ということで、このフリーの演技の完成度の高さは際立っていた。

*3:それが年齢的にはベストに近い時期に行われるソチでの栄冠なのか、それともさらにその先の舞台なのか、ということまでは、自分にはわからないけど。