「勝ち馬に乗る」実力。

週末、あちこちで報道された次世代DVD規格をめぐる「戦争」の決着。


当初有利と囁かれていた「HD−DVD」から東芝が事実上の撤退を決めた*1ことで、「ブルーレイ・ディスク」陣営が標準規格となり、市場が統一されるのも時間の問題だと思われる。


ベータマックス、DVDと、敗北を続けてきたソニーがついに覇権を握った、というニュースも興味深いところだが、それ以上に、VHS戦争以来“負け知らず”のパナソニックの強さも特筆すべきであろう*2


日経のコラムでは、

「興味深いのは松下の動きだ。松下はVTRでソニーと組むそぶりを見せながら、子会社のビクターを担いだ。DVDでは東芝と組んだのに、新世代DVDでは一転してソニー側につく。勝ち馬に乗る作戦だが、流通市場に強い松下の参画自体が米国市場と同様、規格の流れを左右した。」(日経新聞2008年2月17日付朝刊・第5面)

などという書かれ方*3をしていたりもするのだが、今回の勝負を決めたのが、「北米市場を動かす販売力&政治力」だったことからすれば、「勝ち馬に乗った」というよりは、「松下が付いたから勝った」という方が正しいのではないか。


たとえ他人の規格の後追いだったとしても、「勝ち馬」に乗り鞭を叩き続けて先頭でゴールを駆け抜ける、というのは、誰にでもできることではないのであって、ここは率直に評価されて然るべきだと思う。


なお、松下電器が「勝ち馬」に乗ったといえば、最近のNBLの巻頭言で紹介されていた次のような取り組みもそうだ。

「その(筆者注:リスクマネジメントのための経営プロセス)の具体的な事例は、2005年からスタートした松下電器産業によるERMがある。彼らの場合、ERMの視点から松下幸之助の哲学を再構成して、人間を包み込む組織精神資産を作り出し、組織概念を統一し、組織横断的なリスクマネジメントを発展させている(宮崎勇気「ERM:松下電器産業のケース」〔2007〕日本価値創造ERM学会資料)。このようなERMはそれ自体が有効な価値創造経営プロセスとして無形資産であり、競争優位性の基礎を与えるものである。」(刈屋武昭「J-SOX法を考える-ERMの視点から」NBL874号1頁)

J-SOX法による規制を辛らつに批判する刈屋教授が、本項の中で唯一持ち上げた取り組みが上記のものなのだが、いち早く時流を捉え*4、それに乗っかって企業イメージの向上を図っているという点で、見習うべき点は実に多い。


まぁ、企業の業績が上がっている間は、何をやっても褒められるもので、パナソニックのような“現代の理想的企業”の施策が正しかったかどうかは(最近の社名リニューアル等も含めて)、何十年か経ってからでないと正確には検証できないのだが、勝ち続けている限りは「官軍」のままでいられるのも、この世の中のよいところ。


世界のパナソニックが、今はなきカリスマ経営者の「遺訓」を時流に合わせて上手に再解釈(笑)しているのと同じように、我々も「勝ち馬」である松下電器産業の施策を上手に曲解解釈しつつ、自社の施策に取り込んでいく知恵を身に付けるべきなのではないだろうか*5


暇があったら(残念ながら当分見込みはないが)↓なところでも読んでみようかと思っているところである。


松下電器の経営改革 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書)

松下電器の経営改革 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書)


松下幸之助経営回想録 (プレジデント・クラシックス)

松下幸之助経営回想録 (プレジデント・クラシックス)

*1:まだ確報ではないが、ウォルマートが売らない、と決めた以上、遅かれ早かれ市場からは消える運命になるだろう。

*2:VHSに関しては、厳密に言えば勝利ではないのかもしれないが・・・。

*3:全体を通じて読むと微妙な評価をされているようにも見える。

*4:2005年に「エンロン事件」が我が国に与えるインパクトを十分に把握していた経営者が我が国にどれほどいたか、を考えると、動きとしては実に素早いと感心せざるを得ない。

*5:当業界固有のものが残る営業戦略はさほど参考にはならないとしても、組織戦略や法務戦略(リスクマネジメント、コンプライアンス&様々な交渉戦略も含めて)については、業界を越えて学ぶべきものが多いように思われる。