今週は商標法がらみのニュースが多い。
「高杉晋作」や「吉田松陰」など歴史上の人物名は商標に使わずに」。
特許庁は、企業や個人が歴史上の人物と全く関係ないのに、正当な理由なくその人物名を使った商標登録をできないようにする。来年1月にも商標登録の審査基準を改める」
(日本経済新聞2008年6月27日付朝刊・第5面)
確かに「歴史上の人物」になってくると、
「他人の肖像又は他人の氏名若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」(商標法4条1項8号)
という登録阻却事由をストレートに適用することもできないから、悪質な場合に4条1項7号(公序良俗違反)等によるしかないわけで、これまでの商標審査の運用が、“名称の不当な独占”に手を貸していた、という批判が出てきても不思議ではない。
ただ、記事の中で「新たな基準」として挙げられている、
1 故人の子孫の承諾を得ているか
2 地元住民の感情を損ねないか
3 故人が有名である点を利用し、不正な利益を得る可能性があるかどうか
といったものについては、ちょっと引っかかるところもある。
「故人の子孫」といっても、数百年も遡った歴史上の人物の「子孫」の意向をどの程度尊重すべきなのかは疑問なしとしないし*1、「地元住民」といっても、どこがその人物の「地元」なのか分からないような人物も決して少なくない。
記事では、
「過去には東京都の業者が食品分野で「吉田松陰」などの名前を登録したのに対し、故人の郷土である山口県萩市が特許庁に無効と主張、今も審判で争われているという。」
とあるが、早逝の偉人、吉田松陰にしたって、「萩市」以外の“ゆかりの地”は少なからず存在するだろうし*2、そもそも「地元住民」の感情なるものに、商標法上そこまでの保護を与えるべきなのか、考えさせられるところは多い。
いっそのこと、登録段階でややこしい審査基準を持ち込むことなく、出願登録は原則自由、とした上で、権利が及ぶ範囲を狭く解釈すればよいではないか・・・と思ったりもするのであるが、それはそれで自分のこれまでのスタンスとは矛盾するような気もするし(苦笑)、
とりあえずは、これも今後の推移を見守るほかなさそうな感じである。