先日、「歴史上の人物」の名称の審査基準改訂、という話題をご紹介したが(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080627/1214610834)、すでにパブリックコメントの原案が提示されているのを発見した*1。
あくまで人物名称等に関するものに限られるが、商標法4条1項7号(公序良俗違反)の解釈や、「人物名」商標に対する地元の生々しい“アレルギー”等の実態が良く分かる資料として貴重なものだといえるだろう*2。
ちなみに、「具体的な審査の運用」として提案されているのは、
「商標登録出願が地域の産業に悪影響を与え公正な取引秩序を害するおそれや、遺族の心情を害するおそれがあるかどうか等については、例えば、(1)出願の経緯(例えば、出願人の商標採択の理由、出願人の商標としての使用状況・周知著名性等の事情)、(2)故人や遺族との関係(例えば、遺族の承諾を得ているか否か等の事情)、(3)故人と指定商品・役務との関連性(例えば、故人が著名な画家である場合に、「絵の具」を指定商品とする場合には、故人の著名性を利用して商品の品質を誇示する意図の出願と考え得る、故人が著名な音楽家である場合に指定商品が「便器」の場合と指定商品が「チョコレート」の場合とでは、故人の名声・名誉が害される可能性が異なると考えられるなど。)、(4)故人名を登録した場合の社会や産業への影響(例えば、故人の遺産等を管理している者が存在するか否か、故人の氏名等を既に地域振興等に利用している状況にあるか等の事情)等について、職権による調査及び出願人の反論や反証を通じて判明した情況証拠を総合的に勘案して判断することとする。その上で、その商標登録を認めることが地域の産業に悪影響を与え公正な取引秩序を害するおそれがあったり、遺族の心情を害するおそれがあるといわざるを得ない場合には、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として拒絶するものとする。」
あくまで商標法4条1項7号の枠の中で判断する方針のようだ。
先日も述べたように、個々の考慮要素については、考えさせられるところもあるのだが、元々曖昧なものと思われがちな公序良俗規定の解釈について*3、特許庁が自ら積極的な解釈基準を公表していることに関しては率直に評価したいと思う*4。