ここのところ問題になっていた「ゼロ・ゼロ物件」に関し、大阪簡裁が何とも奇妙な判決を出した。
「家賃滞納を理由に無断でマンションの鍵を交換され、閉め出されたとして、借り主の男性(37)が貸主の大阪市の不動産会社に慰謝料などを求めた訴訟の判決で、大阪簡裁は22日、約65万円の支払いを命じた。」
「篠田隆夫裁判官は「鍵を交換して閉め出す行為は、許される権利行使の範囲を著しく逸脱し、平穏に暮らす権利を侵害する」と判断。会社側が日常的に鍵交換をしていたと認定し「国民の住居の平穏や居住権を侵害する違法な行為として厳しく非難されなければならない」と断じた。」
(日本経済新聞2009年5月23日付朝刊・第38面)
全国で似たような相談、苦情は上がっているようだから、“これぞ借家人サイドに立った画期的判決!”とばかりに喝采を上げる者もいるのかもしれないが、冷静に考えてみるとどうだろう?
たまたま1回賃料支払日を失念した、というレベルの話であればともかく、「数回の滞納」を行っているような借家人をここまでリップサービスして保護してやる必要があるのか、筆者は疑問を禁じ得ない。
元々、入居時の初期負担が最小限に抑えられている上に、家賃も相場に比べて安く設定されている*1物件であれば、当然貸主側のリスクも大きいわけで、債務をきちんと履行しない賃借人に対して厳しい処置をとったとしてもそれを一概に非難するわけにはいかないし、そのような貸主に対して不寛容な態度を貫くことは、“家賃を滞納することなく毎月きちんと支払う”善良な借り主が、安価で良質な物件の恩恵にあずかる可能性を狭めることにつながりかねないのではないだろうか?
「簡裁」での訴訟を担当していると、時々、時流におもねって“正義の味方ぶる”タイプの裁判官にあたってしまって閉口することが多い*2。
そして、実際の判決を読んでいない以上断定はできないが*3、本件もその手の裁判官が思わず筆を滑らせてしまったケースではなかろうか。
鍵をとっ換えることなく建物賃貸借契約を継続できるのであれば、貸主にとってもその方が有難いに決まっているわけで、それでも鍵をとっ換えないといけない理由は何なのか。
マクロな視点からそういったところに目を向けられたならば、借り主を救済するとしてももっと穏当なやり方があったように思えるのであるが・・・