待望の新刊

労働法にまつわる仕事にかかわっている多くの関係者が待ち望んでいたであろう、本格的な概説書が遂に発刊された。


労働法

労働法


自分も、旅先の某大型書店で見つけた瞬間にレジに走った*1


章立てとしては、

第1部 労働法総論*2
第2部 個別的労働関係法
 第1編 労働保護法*3
 第2編 労働契約法*4
第3部 集団的労働関係法*5
第4部 労働市場*6

といったところ。


ベースになっているのは「法学教室」での連載(2006年4月〜2008年3月)、ということであるが、荒木教授ご自身が「はしがき」でコメントされているように、個別労働関係法の章は大幅な再構成や加筆修正がなされているし、元々分厚かった労働契約、労働条件変更法理等のトピックのみならず、他の分野にも然るべき気配りがなされていて、体系的な「基本書」としての位置づけが十分に意識された構成になっている。



で、まだ本格的に目を通したわけではないのだが、、ざっと読んだところでは、“流れ&バランス重視”という印象を受ける。


長年『菅野労働法』を読み慣れた実務者にとっては、脚注や参照判例・文献の“薄さ”がややもすると物足りなく映るかもしれないが、反面、流れ良く労働法体系の全体像を把握するにはこのスタイルの方が優れている、という見方もあるところだろう。


本文の記述そのものは決して薄くはないし、トピックによっては先達の概説書よりも、はるかに濃い(笑)ようにも思われるだけに、まず取っ掛かりに読んでみて、さらに事実関係やら関連する判例、文献なりに一通り当たった上でもう一度(行間も含めて)読んでみる、という使い方が、この書の持ち味を引き出す最善の利用法のような気がしている。


もちろん、分野を問わず、法律書の“使い勝手”がどの程度のものなのかは、真に使う必要に迫られるまでは、決して実感することができないものなのであるが、この分野に限って言えば、望むと望まざるとにかかわらず、そういう時は遅かれ早かれ訪れるだろうから(苦笑)、実感するまでにはそんなに時間もかからないだろう・・・*7

*1:おかげで持ち帰る荷物が想定外に重くなった上に、そうでなくても苦しい財布が一層軽くなり、一部関係先への土産が、質・量ともに大幅に削減されたのはご愛敬である・・・。

*2:労働法の形成と展開、労働関係の特色・労働法の体系・労働条件規制システム

*3:労働者の人権保障、雇用平等、ワークライフバランス法制、賃金、労働時間、年次有給休暇、安全衛生・労働災害

*4:基本原理、雇用保障と雇用システム、労働契約の成立・開始、就業規則と労働条件設定・変更、人事、企業組織の変動と労働関係、懲戒、非典型雇用、個別的労働紛争処理システム

*5:労働組合、団体交渉、労働協約、団体行動、不当労働行為

*6:総論、各論、雇用システムの変化と雇用・労働政策の課題

*7:純粋に仕事で降りかかってくるのか、それともプライベートで我が身に降りかかってくるのかは分からないが・・・。願わくば前者であることを望みたい。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html