それでもまた「一段」、彼女は登った。

別に自分とて望んでいたわけではなかったのだが、終わってみれば、昨日のエントリーで予感したとおりの結果になってしまった。

上村愛子選手。フリースタイルスキーモーグル女子決勝、4位

いくら運命の神様だからといっても、長野五輪の7位に始まって、4年ごとに6位(ソルトレイクシティ)、5位(トリノ)、そして4位、という順位を与えるとは、なんて、ちょっと悪戯が過ぎるんじゃなかろうか。

「私は何でこんなに一段一段なんだろう」

というインタビューに思うところがあって、自分も思わずテレビの前でもらい泣きしてしまいそうになった。


(次元の低い話で恐縮だが)毎年めぐってくる資格試験だって、論文をコンマ何点差で落ち続けたら精神的にかなり来るものがある。ましてや、4年に一度しかない五輪となれば・・・。



BSで予選から全選手の滑りを見た印象としては、結果自体は妥当なものだったと思うし、これまでの五輪よりも表彰台との距離はむしろ開いたようにも見受けられた*1


エアで3Dの大技を競っていた時代は過ぎ、北米流の豪快さとテクニックを兼ね備えたターン(&スピード)が求められる(ように見える)時代に、“丁寧だが繊細過ぎる”東洋の選手が上位に割って入るのはなかなかキツイんじゃないかと思う。今季のW杯ランクとほぼ同じ、予選の順番プラスマイナス1くらいのポジションが、上村選手の今の相対的な場所だったのだろう。


そして、ずば抜けた力(&ネームバリュー)があるアメリカ、カナダの両エースがいた以上、国籍を問わず、最後の一枠に食い込む(あるいは上位2名を上回るスコアを出す)には、一か八かの思い切った勝負を仕掛ける必要があったのではなかろうか。


予選上位の2選手がギャンブルを仕掛けて潰れる一方で、一つ後ろのポジションにいたシャノン・バーク選手が賭けに成功し、結果として、“きれいにまとめた“感のある上村選手の順位を上回ったのは、決して偶然ではなかったと思う*2


4年前にも思ったことだが、上村選手のインタビューや滑リ終わった時のアクションからは、純粋アスリート的なひたむきさ、ストイックさが強く感じられる。
新興種目の選手にありがちな路線*3とは一線を画しているように見えるそういったスタイルが、ルックスと相まって彼女の国民的人気を支えていたのは間違いない。


だが、ハイテンションなBGMがガンガン流れる中、勢いに乗って“飛んでくる”かの競技(あくまでイメージだが)の競技者としては、そんなスタイルが“あと一歩足りない”何かにつながってしまったんじゃないか、と素人目には思えてしまうわけで・・・。




とはいえ、今回4位に終わったことが、彼女のこれまでの世界選手権、W杯での輝かしい実績を消し去るわけではないし、そもそも、一発勝負的要素が極めて強い種目であるにもかかわらず、出場した4大会すべてで(しかも一度を順位を落とすことなく)入賞する、ということ自体が神業に近い*4


今後の彼女の去就が気になるところではあるが、今日のところは、これまで長い時間をかけて一段一段階段を上ってきた彼女が、この4年間でまた「一段」上に登ったことを素直に称賛するとともに、一日本人が成し遂げたこの歴史的瞬間を我々が目撃することができたことに感謝したいと思う。

*1:過去2回の五輪では、エアやターンの質はそんなに違わないように見えるのに、採点が???というパターンが結構多かったような気がするが、今回に関しては採点に意を唱える日本人はおそらくいないだろう。

*2:第2エアで崩れて結果的には残念なことになってしまったが、そこまでは思いっきり良く突っ込んでいた里谷選手の方が、むしろメダルには近かったように感じられたし、若さの勢いで思い切りの良い滑りを見せた村田選手の方が、将来的には上に行く可能性が感じられた。

*3:典型はスノボだろうが、同じ種目にもあまり芳しくない前例はある。

*4:あのカーリ・トローでさえ、最初の大会(アルベールビル)では予選落ちしているし、次の大会(リレハメル)には出場すらかなわなかった。五輪に出てメダルを取ったのは「3大会」だけだ。今大会金メダルのカーニーにしても、トリノでは予選落ち、ジェニファー・ハイルも、これがようやく3大会目である。

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