名誉ある引退。

日本で頂点を極めた彼女が、過去2年はじき返され続けてきたドバイに今年もまた行く(しかも未知数のオールウェザー馬場で行われるドバイワールドカップを目標に)という話を聞いた時に、ちょっと引っかかるものはあった。


しかも、これが引退レース、その後は欧州に渡って繁殖入り・・・と聞けば、否が応でもホクトベガの悪夢を思い出してしまうわけで、先日のドバイ初戦の結果を聞くまでは不安で仕方なかった。

ディープインパクトなどと並ぶ中央競馬G1級7勝を挙げた牝馬ウォッカ(6歳・栗東)が引退することが決まった。管理する角居勝彦調教師が7日、発表した。同馬は4日にアラブ首長国連邦UAE)のドバイで行われたレースで8着に敗れ、その後鼻出血を発症。引退レースになる予定だったドバイ・ワールドカップ(G1、27日)への出走を回避し、種付けのためアイルランドに向かうことになった。」(日本経済新聞2010年3月8日付朝刊・第37面)

ワールドカップと全く同じ条件で行われたドバイ初戦(マクトゥームチャレンジラウンド3)で8着惨敗、となれば、ここで引退、というのも当然の帰結だと思う。


これから繁殖に入ってブライアンズタイム(父系)×名門トウショウ一族(母系)の血を引いた産駒を残す、という大仕事が残っている以上、馬に致命的なダメージを与えるようなことは、何としても避けねばならない。
それに、昨年までの戦績を見る限り、彼女がドバイで良績を残せる可能性は決して高いとは言えなかった。


一時に比べると世界との距離がだいぶ開いてしまった感がある日本競馬界だけに、世界最高の舞台で、ウォッカが沈滞ムードを打ち破ってくれればそれに越したことはなかったのだろうが、逆に彼女が惨敗を喫するようなことになれば、沈滞ムードがより強くなるおそれもあったから、前哨戦での敗北そして鼻出血再発、というアクシデントを契機に、「名誉ある引退」という“花道”を作った陣営の選択は実に賢明だった、と言わざるを得ないだろう。


もちろん、一ファンとしては、国際舞台で最後の花道を飾るシーンが見たかった、というのも事実なのだけれども・・・



奇しくも、彼女が敗れたドバイでのレースで、新・牝馬最強世代の一角、レッドディザイアが見事な勝利をおさめ、同馬は、ウォッカの引退と相前後してドバイワールドカップへの参戦をも表明することとなった。


あまりに鮮烈だったドバイでの女王交代劇。


レッドディザイアと、(同馬へのライバル意識むき出しに)シーマクラシックに参戦するブエナビスタが、日本牝馬の・・・、否、日本競馬界の新たな主役として、遠いドバイの地で勝ち名乗りを上げてくれることを、心から願っている。

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