「裏番組」というなかれ。

先月のサウジアラビアでの「ジャパン・デー」に続き、今年はドバイでも「日本馬祭り」だった。

国内でも3歳時のGⅡ勝ちしかない矢作厩舎のバスラットレオン、ステイフーリッシュが国際GⅡ格のレースを次々と勝ったかと思えば、国内では1勝クラスの特別戦を勝っただけのクラウンプライドがUAEダービー(GⅡ)を制覇。

さらに、その後のGⅠ4レースは、日本馬2頭がゴール前で前年覇者に襲い掛かったドバイターフの劇的なゴールシーン*1と、シャフリヤールのドバイシーマクラシック優勝を筆頭に、レッドルゼルの2着(ゴールデンシャヒーン)あり、ゴール前で本命馬を交わし去ったチュウワウィザードの鬼脚3着あり(ドバイワールドカップ)と、いずれのレースも見せ場十分で、かつては崇め奉った「海外GⅠ」も、今や、JRAの一ローカル開催と見まがうような光景がそこにはあった。

で、こうなると、例年の如く寂しくなるのが国内のレースである。

馬だけでなく、騎手も川田騎手、ルメール騎手がドバイに飛んでいて、しかも三場分散開催、となれば、日本国内のどの競馬場を見ても何となくいつもと違う雰囲気になって、メインの高松宮記念も何となく”裏開催”モードになってしまう、というのがここ数年の常だった。

ただ、今年に関して言えば、それが良い方向に作用した。

美浦所属、今年で16年目の中堅騎手ながら、”ローカルジョッキー”の印象も強く、今年もここまで2勝しかしていなかった丸田恭介騎手が、8番人気のナランフレグを駆って、人馬ともに堂々のGⅠ初優勝

「人馬」ということに関して言えば、騎手だけでなく、開業30年目、御年67歳の宗像義忠調教師もGⅠ初制覇*2。さらに馬主も、生産者も、これが初重賞、初GⅠという記録尽くしの勝利となった。

土日で4勝を挙げてルメール騎手を追い抜いた横山武史騎手が、大本命のレシステンシアをハイペースに過ぎる逃げで潰す、というやや自信過剰気味にも見えたレース運びをすることがなければ、あるいは、次いで支持されていたメイケイエール、グレナディアガーズといった他のノーザンファーム生産馬たちが、大外枠に飛ばされていなければ*3、例年のように”残念ドバイ”のGⅠレースとして、さほど記憶にも残らない形で終わったかもしれない。

だが、そこでレースが荒れ、いつになく低人気馬が馬券に絡む決着となったことで、新しい歴史が生まれた。

来週になれば、少なくとも騎手の顔ぶれはこれまで通りに戻り、春のGⅠレースが淡々と行われていくことになるのだろうが、「裏」だったからこそ、様々な関係者を幸福にする決着が導かれた、ということは、しばらくは忘れずに記憶の片隅に残しておきたい、と思っているところである。

*1:同着優勝となったパンサラッサと吉田豊騎手が素晴らしかったのは言うまでもないが、この一年さっぱりだったヴァンドギャルドがこの争いに絡んだ、というのも同じくらいドラマチックな話だった。

*2:個人的には薗部博之氏のバランスオブゲームで重賞を勝ちまくっていた印象が強く、GⅠもとっくの昔に取られていた印象があったのだが意外にも今回が「初」である。

*3:雨が降って重くなった馬場で大外枠からの追い込み勝負を強いられれば、どんな馬でも苦労する。

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