日曜夜の遅い時間に放映された世界ジュニアフィギュアスケート選手権の録画映像を眺めてみた。
男子も女子も結果は見る前から分かっていたのだが、それでもいろいろと発見は多い。
例えば、村上佳菜子選手がSP2位から順当に逆転優勝した女子。
ここ数年日本女子を支えてきた選手たちの多くが、4年後にはリンクを去っているであろう現実を考えると、浅田真央選手以来出ていなかった日本人ジュニア女王が、5年ぶりに誕生したことそれ自体に大きな意味がある。
それに、選手の今後の競技生活へのモチベーションを考慮すると、安定したジャンプ*1だけでなく、スピン・ステップにも冴えを見せる*2村上選手が、その実力にふさわしいタイトルをこの時期に取れた、というのも有意義だったのではないかろうか。
ただ、個人的には、この大会での村上選手のフリーの演技は、“村主を凌駕し、安藤に肉薄した”全日本フィギュアでの勢いあふれた滑りに比べると、何となくおとなしめのように見えた*3。
まだまだ今のシニア選手たちの層が厚い上に、今回上位に食い込んだ選手の中には、ロシアの“13歳コンビ”*4なんぞもいたことを考えると、4年後のソチまでの間には何が起こるか分からないわけで、今年のチャンピオンが数年後、“今大会がピークだった”なんて言われていないことを自分としては祈るしかない。
一方、男子は何と言っても羽生結弦選手のインパクトが鮮烈であった。
見るからに線の細さが目立つものの、ジャンプを跳べば美しい空中姿勢と着地をビシバシ決めてくるし*5、つなぎでは、女子選手と見まがうようなレイバックイナバウアーに、まさかのビールマンスピン*6。
ジュニア世代だからこそできること、なのかもしれないが、このまま“和製ジョニー・ウィアー”として成長すれば、本家のジョニーを超え、日本男子3強の一角を崩す日もそう遠くはないだろう*7。
ステップで世界と勝負できる日本男児が氷上に登場して*8、驚かされたのはつい数年前のことだというのに、今度は“イナバウアー男子”かと思うと、時代の進化の早さにはあきれるほかない。
これでもう一枚、本格派パワータイプの日本人スケーターでも登場したら、4年後が凄く楽しみになるのだけれど、それはないものねだり・・・というべきなのだろうか(それでも、観戦者の欲望にはキリがないのだが(笑))。
* * *
いずれにせよ、あと1週間くらいで今季のトリを飾る世界選手権が始まり、そしてフィギュアのシーズンがまた一つ終わる(・・・そう考えると、一年のなんと早いことか)。
五輪で満足のいく結果を残せた選手もそうでない選手も、最後にベストを、と、心より願っている。
*1:フリーでは、エラーエッジを取られた最初の3ルッツ以外はすべて加点対象となるジャンプ。しかも終盤に、3フリップ+2アクセルのSEQと、3サルコウ+2ループ×2の3連続ジャンプという大技を成功させた時点で、この大会での勝負は付いたと言える(2位には10点近い差が付いた)。
*2:3種類のスピンはすべてレベル4、ステップもレベル3で+0.90点という見事なものであり、これらの点に関しては、同時期の浅田真央選手よりも遥かにレベルは高いと思う。演技構成点もSP、FSともに参加全選手中トップの数字を残している。緩急の付いたプログラム(曲)構成に助けられていた面もあるのだろうが。
*3:五輪での上位選手たちのパーフェクトに近い演技をつい最近まで見ていたがゆえに、なおさらそう思えてしまったのかもしれないが・・・。
*4:特にSPで首位に立ったオフチャロワ選手の方は、いろんな意味で将来性を感じさせる。
*5:エッジが怪しいと指摘された3フリップを除いてすべて加点付き。終盤の3アクセル+2トゥーループと、3サルコウ‐3トゥーループを決めたあたりは圧巻だった。
*6:ステップはレベル2にとどまっているし、スピンもレベル4は1つだけ、とこの辺はまだまだ磨く余地がありそうだが。
*7:もっとも、シニアに行くと、“力強さ”を高く評価する傾向も強いようだから(だからウィアー選手はいつも判定に泣かされる)、今大会のようなハイスコアを常に期待できるとまでは言えないのだけれど。
*8:それまであんなものはフランス人の専売特許で、日本人はジャンプの技で勝負するしかない、と思っていたのに・・・。