自分の道を進み続ける美しさ。

ちょうどシーズンが始まった頃から、怒涛の慌ただしさの海に放り込まれてしまったこともあり、今年のフィギュアスケートは、まだ、どの選手の演技もほとんどまともに見ることができていないのだが、羽生選手が銀河系を超えてアンドロメダの域に達してしまったらしい、ということと、復帰した浅田真央選手が健闘しているもののまだ演技は完成途上らしい、ということくらいは耳にしている。

そして、シーズン前半のハイライト、GPファイナルも、そんな何となくの感覚をそのまま裏付けるような結果に収まったようだ。

羽生選手に関しては、大きなアクシデントに見舞われた昨年ですら、シーズンを通してみれば遜色ない実績を残したのだから、順調にここまで来ている今季、Gpファイナルで2位に40点近い差を付けて圧勝、という結果を残したと聞いてもそんなに驚きはない*1

これが五輪シーズンであれば、「こんな時期にピークを持ってきて大丈夫か?」という心配もしないといけないのだろうが、今季は五輪中間年、という選手にとっては一番プレッシャーがかかりにくい環境で滑れる年だから、体が動く時にどんどん跳んで歴史を塗り替えていけばよいし、それに対して誰も文句を言うことはできないだろう。

シーズンの終わりまで今の勢いが持続して、男子フィギュアスケートのレベルをさらに引き上げるのか、それともシーズン後半になって、この日の演技を超えられない自分に戸惑うことになるのか、現時点では予測もつかないのだけれど、躍進著しい宇野選手も後ろに控えているだけに、どんなに崩れても、今季は世界選手権で「3」枠を取り返してくれる、と自分は確信している。

一方、女子は、SP3位発進の浅田選手が、フリーでさらに沈みまさかの最下位(6位)。

復帰発表からジャパンオープン中国杯での優勝、というあたりまでが順調すぎただけに、世知辛いメディアからは、ここに来て“息切れ”という受け止められ方をされてしまうのかもしれない。

だが、「6位」といっても、今大会のフリースコアは125.19点。
先日のNHK杯では120.49点、優勝した中国杯ですら125.75点に留まっていたことを考えると、今大会の浅田選手のパフォーマンスが格段に悪かった、というわけではなさそうだ*2

もちろん、厳しい言い方をするならば、「4分」という長い滑走時間の中で、いま彼女が示せる総合力はまだこのレベル、ということなのかもしれないが、今年のこれまでの大会の映像を断片的に見ていると、トリプルアクセルにしても、3回転コンビネーションにしても、個々の要素を見れば、休養前以上に高いレベルで跳べている時はあるように思えるだけに、注目を浴び続けることによるプレッシャーからもう少し解放されれば、もう一段上に行けるのではないか、と思わずにはいられない。

日本国内で負ける要素がほぼ皆無の羽生選手と比べると、浅田選手は、現状、今季も好調の宮原知子選手*3本郷理華選手に次ぐ3番手、という評価が穏当なところで、年末の真駒内では、より日本女子の層の厚さを感じさせられるような結果になるかもしれないけど、“ほぼ引退確実”と思われていた状況から、自らの意思で再びリンクに戻って第一線で活躍している、ということの価値は決して色褪せるものではない。

この10年、浅田選手が日本のフィギュアスケート界にもたらした影響には絶大なものがあるし、彼女の存在ゆえに、フィギュアスケートの魅力に気が付いたファンも数多くいるはず。
だからこそ、常に結果が伴う状況ではなくても、一歩一歩進んでいる浅田選手を見守り続けることが、ファンからの最大の“恩返し”だと思うし、そういう“恩”には、さらに世界を驚かせるパフォーマンスで答えてくれるのが、浅田真央という選手だと自分は信じている。

なお、ここ数日のあまりの過酷な環境ゆえに、残念ながらGPファイナルの映像は、「断片的」にすら見られていない状況だが、願わくば、全日本フィギュアの時くらいは、心穏やかに、映像に五冠を集中させられるような余裕を取り戻していたいものである。

*1:個人的には、トータルスコア330点超え、という演技がどんなものだったのか、後学のために見ておきたかった、という思いはあるが、彼の進化のレベルを考えると、二度と見ることができないようなスコア、ということでもないと思う。

*2:もちろん、今大会は、これまでフリーのスコアを補っていたショートプログラムでも躓いた、という事実はあるが。

*3:昨年の全日本女王&世界選手権2位、今季NHK杯優勝、という十分すぎる実績を残しているにもかかわらず、メディアの彼女に対する扱いは、あまりに礼を欠いているのではないか、と思わずにはいられない。

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