ターニングYear

傍からは順調のように見えても、(心情的には)山あり谷ありだった「2010年」が間もなく終わる。

一昨年、昨年と、人生の節目、区切りになるような大きな出来事が立て続けにあったことを考えると、今年は決定的なインパクトに残るような出来事はなかったように思うし、一見、大きな「変化」のように見えることでも、実際には、それ以前から予定調和的に定まっていた道の上を歩いているだけ、だったから、そこに“10月の奇跡”や“3月の涙”*1のような、ドラマティックな感動を求めるのは、ちょっと無理があった。


もっとも、一つ挙げるとすれば、今年、名実ともに“管理職”という立場になったことは、それなりに大きな変化だった、と思う。

勤務時間の縛りがなくなった*2、とか、給与面が(多少なりとも)良くなった、ということはさておき、それ以上に、

「これまで、自分のテクニックで切り抜けることで評価されてきたような場面でも、誰か部下を絡ませてそいつを育てながら・・・という形で処理していかないと、評価されなくなった」

というのが一番大きかったところ。

これまでも、効率的に仕事を片付ける上で、適度に周囲に“ボールを散らす”というのは、それなりにやっていたのだけれど、ややこしい話になると単独で強行突破してしまった方が早かった、という現実もあったわけで、それが物理的にも*3、“あるべき論”としても許容され難い環境になったときに、どうやって、これまでと同じような仕事量と効率をキープするのか*4、というのが、今年一番頭を悩ませていたことだった。

もちろん、「法務」という部門を背負って*5、“子分”を引き連れて他の部署に乗りこんでガンガンやり合ったり、会社という巨大組織を動かす綱引きを差配したり、というマネジメント層ならではの面白さもあるし*6、チーム内での担当者との距離感も、時間が経つにつれて、少しずつ掴めてきたかなぁ、と感じているところでもある。

ただ、それまで、担当者として遮二無二やっていた時はそんなに気にならなかった「組織の限界」*7を、立場が変わったがゆえに、ちょっとずつ意識せざるを得なくなっているのも事実。

自分がゴールを狙える位置にいるのに、あえてパスを出すことが推奨されるもどかしさや、自分の力を最大限発揮できるポジションはここではない、と分かっているのに、チーム全体のバランスを考えて、収められたポジションの役回りに徹することを余儀なくされるがゆえの不完全燃焼感。

今年の後半の数カ月は、自分が理想とするパフォーマンスと、現実とのギャップとのギャップにさいなまれながら過ごした、といっても過言ではなかっただろう。


今の世の中、その辺の事務所*8に入って弁護士やるよりも、一応完成度の高い組織がある会社の中で仕事をした方が、学べることも多いし、実り多き仕事ができる、と自分は確信しているし、それゆえに、大きな迷いもなく、スムーズにここまで来ることができた。

だが、この先もずっとここに居たとして、精一杯自分の力を100%出し切って、悔いのない人生を満喫できるか、といえば、そこまで言い切る自信は全くない。

空がまったく見えない地べたを這いまわって仕事をやっていた頃には気が付かなかった「天井」が、少し高い場所に上ったことで具体的に形をもった「壁」として目に入るようになってしまった・・・

それが今の率直な心情だろうか。

その意味では、後で振り返ったとき、自分の生き方を考える上で大きなきっかけになる経験をした一年だった、というのが今年の「評価」になるのかもしれない。

なお、既に、中期的な目標は立てているのだけれど、それは年が変わってから書くことにしようと思う。

*1:あくまで自分の中だけで使ってるフレーズなので、読者の方には何のことやらわからんと思いますが・・・すみません。

*2:その割には、悪しき“管理職たるもの・・・”精神のおかげで、会社に束縛される時間はかえって担当者時代よりも長くなったような気もするのだけど。

*3:担当する仕事の範囲が広くなっている上に、会議等に取られる時間も増えている分、管轄の仕事を全部自分一人でさばき切るのはかなり難しい、というのは事実。

*4:社内のクライアントは、それまでと同じような処理の質とスピードを期待して自分のところにお願いに来てくれるわけだから、最低限失望させない程度のクオリティと迅速さは維持しなければならないし、それができない言い訳として、「部下の出来の悪さ」を理由にするわけにもいかない(そもそも「部下の出来の悪さ」は、イコール「上司にマネジメント能力・教育能力が欠けていること」の裏返しに他ならない)。

*5:といっても、部長の代理の代理くらいのポジションでしかないのだが。

*6:もっとも自分の場合、ヒラ担当者の頃から、遠慮なく物は言ってたから、やっていることはそんなに変わっていないのだけれど・・・(むしろ守ってあげないといけない担当者がいる分、ちょっと守備的になっているところもあるかもしれない)。

*7:ここには、自分がいる会社が抱えている「限界」も含まれるし、そもそも、「組織」として大量の人間と共同歩調をとってやらないといけないがゆえの「限界」もある。

*8:どんなに名前のある事務所でも、組織としてはガラクタの寄せ集めみたいなものだ。

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