検察官が請求していた捜査段階の供述調書の証拠採用が退けられるなど、郵便料金不正事件の再来を思わせるような展開で審理を終えていた「陸山会」事件。
だが、東京地裁は、最後の最後で、あっと驚くような判断を示した。
「小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体『陸山会』を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人の判決公判が26日、東京地裁であった。登石郁朗裁判長は、陸山会の政治資金収支報告書に虚偽の内容を記入したと認定し、石川議員に禁錮2年、執行猶予3年(求刑禁錮2年)を言い渡した。」(日本経済新聞2011年9月26日付け夕刊・第1面)
元秘書3人について共謀を認め、猶予付きとはいえ全員有罪判決、とくれば、事実上検察側の完全勝利といえるだろう。
自分は、証拠に生で接したわけではないし、被告人、証人らが公判で供述した場面に立ち会ったわけでもないから、上記のような地裁の判断が適切なのかどうか、安易に語ることはできない。
ただ、こういう結論が出た、ということは、おそらく、
「判決は調書以外の法廷証言や客観証拠などを基に起訴内容を認定」
(日本経済新聞・同上)
するだけの何かがあった、ということなのだろう。
ちなみに、有罪判決後、弁護側は直接的な証拠もないままに有罪認定したことを強く批判しているようだが、時に強引かつ違法な取調べを誘発する「自白偏重主義」を改めようとするのであれば、「被告人の自白」という直接証拠に依拠するのではなく、客観的に収集できる間接証拠を積み重ね、合理的な推認を働かせて結論まで持っていく、という手法も十分に尊重されなければならないと思うところ。
こと本件に関しては、今後、上級審で結論がひっくり返る可能性もないとは言えないのだろうが、もしこのまま検察官側の見越したストーリーで決着するようなことになれば、これが一つのターニングポイントになる・・・本件はそんな事件になるのかもしれない。