“社外”は最良の処方箋か?

昨年のウッドフォード社長電撃解任、そしてまさかの“飛ばし”発覚、と不祥事の大波に襲われたオリンパスが、ようやく4月20日の臨時株主総会後の新体制を発表した。

「11人の取締役のうち、過半数の6人は取引関係のない企業の出身者や弁護士」

という布陣。

「株主の推薦」でボードに入る人(海外投資家の受けが良い人々)もいれば、旭化成最高顧問、花王前会長、そして新日鉄の常務まで務めた企業法務界の重鎮・西川元啓弁護士といった産業界を代表する方々も、ボードメンバーに勢ぞろい、ということで、一見すると文句なしの布陣のようにも思えるが、それでも、日経紙は、

最高経営責任者(CEO)を他社から招くなど大胆な改革を断行して、世界に変化をアピールしても良かった」

という久保利英明弁護士のコメントを掲載して、“まだまだ”というプレッシャーをかけようとしているように見える*1

だが、今回の“オリンパス・ショック”への対応策として、“社外の人間を連れてくる”ことが最良の方策なのか、と言われれば、個人的には首を傾げたくなるところも多い。

創業家”の威光の前に、取締役会がまったく機能しなかった大王製紙の子会社(あるいは大王製紙本体も)であれば、そういった方策も一応は有効と言って良いだろう。

ことは単純な“巨額貸付”で、取締役会をきちんと開催しさえすれば、「そんなことはやるべきではない」という結論が導ける世界の話だからだ。

しかし、オリンパスの場合はそうではない。

資金調達を担当する財務部門の一部の人間が、経営トップを巻き込み、外部のコンサルタントをフル活用して素人には到底見抜けない巧妙なスキームを作り、自部門以外の人間には見えないところで粛々と実行していた、というのが、例の“飛ばし“事件の構図である。

三者委員会の報告書が指摘するように、事件が発覚した今となって見れば、“見抜けるはずの兆候”は取締役会付議議案の中にも顕れていた、ということができるのだろうが*2、何年か後にこんな大きな騒ぎになることを知らない人々がいくら膝を突き合わせて議論したところで、当時の各取締役の知見に照らせば、巧妙なスキームを維持するための各施策の真の背景を見抜くことは、難しかったのではないかと思われる。

現に、問題の議案に反対を唱えなかったことを理由として、会社から責任を追及されている取締役の中には、「社外取締役」も含まれている。


社外の方を招きいれれば、トップや他の役員との関係で、取締役会等の会議の場でしがらみなく発言し、議決に参加できる、というメリットがある一方で、業務執行部門で何をやっているのか、その背景はどこにあるのか、といった経営判断の基礎となる情報、がボードメンバーが入ってきにくくなるのは間違いないところ。

奇しくも、2月26日付けの朝刊において、ソニーの取締役会議長を長年務めてきた小林陽太郎氏が、

社外取締役が多ければいいというわけでもない。ソニーの場合、取締役会で社内の経営情報が足りないと感じることがあった。ソニーは今後、社内の取締役をもっと増やした方がいいかもしれない」(日本経済新聞2012年2月26日付け朝刊・第7面)

と述べておられるように、どんなに優秀な人々をボードメンバーに揃えたところで、肝心の情報が入手できなければ何の意味もない、宝の持ち腐れとなってしまうのは間違いない。

そういった点を踏まえて、今後のオリンパスがどのようなガバナンス体制を組んでいくのか、そして、それをメディアがどう評価するのか、といった点について、見守っていく必要があるのではないか、と考えているところである。

*1:日本経済新聞2012年2月28日付け朝刊・第11面。

*2:例えば、国内3社の買収価額算定に際してのあまりに不合理な経営計画など。

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