これまで二度にわたる投票を行っても決着が付かず、とうとう立候補者を募り直しての「再投票」にもつれ込むことになってしまった日弁連会長選だが*1、“3度目の正直”とばかりに、ようやく決着がついた。
「日本弁護士連合会は27日、宇都宮健児会長(65)の任期満了に伴う会長選の3度目の投票を実施し、元日弁連副会長で東京弁護士会所属の山岸憲司氏(64)が、史上初の再選を目指した宇都宮氏を破り、会長に決まった。任期は2014年3月まで。」(日本経済新聞2012年4月28日付け朝刊・第42面)
本来、前会長の任期は3月末までだったはずで、記事によれば、宇都宮前会長が4月以降「代行職」として会長職を務めていた、ということのようだが、こんな書き方をしていることからも分かるように、通常の弁護士の仕事にはもちろんのこと、各弁護士会の通常の会務にすら、「会長不在」の影響などほとんど出ていなかったように思う。
それだけ存在感のない「会長」というポストを、莫大な事務コストをかけて3度も争うことの虚しさやいかに・・・*2。
一応、過去2回の投票結果と比較するならば*3、
山岸候補 7964票(12会)→8558票(14会)→8546票(19会)
宇都宮候補 6613票(37会)→7486票(37会)→7673票(32会)
と、2度目の投票に比べて得票数の差はさらに縮まる、という展開ながら、山岸候補が最多票を確保した単位弁護士会の数が前回より5会増加し、全体の3分の1超(18会以上)という要件をクリアしたため、当選に至った、ということになる。
各弁護士会ごとの得票状況をみると、宇都宮候補から山岸候補に乗り換わったのが、新潟県、三重、広島県、鳥取県、沖縄、仙台、釧路、愛媛の8弁護士会で*4、1票差〜3票差くらいの僅差で地方の弁護士会での優劣をひっくり返し、特に、過去2回の投票で一度も山岸候補が勝っていなかった(しかもダブルスコアに近い負け方をしていた)仙台弁護士会を150対149の僅か1票差でひっくり返した、というのが大きかったようだが、この辺りは人事面での配慮等、アメリカの大統領選を彷彿させるような利益誘導策高等戦略の賜物、という指摘もあるところで、何ら利害関係のないところから眺めている身からすれば、何だかなぁ・・・という突っ込みもしたくなるところ。
もちろん、裁判員制度にしても、取調べの可視化問題にしても、シュリンクしつつある法曹養成制度の問題にしても、弁護士会が率先してビジョンを示していくことの意義はあるはずだから、大きなコストを払ってポストに就いた新会長&新執行部には、僅かでも前向きな道筋を示していただけるよう期待せざるを得ないのだけれど、それより先に、まずは最優先事項として、
「弁護士会長選挙の再投票で決着が付かなかった場合の極めて公正かつ合理的な会長選出方法として“じゃんけん”を導入する」
という方向で、会長選挙規程の速やかな見直しに着手していただくことを願うのみである*5。
2年なんてあっという間に過ぎてしまうわけで、今回の混乱の反省すら生かせないようであれば、それこそ「弁護士会=未来のない団体」との誹りを免れ得ないのだから・・・。
*1:結果的に再投票に進んだ2候補者以外に立候補者がなかったため、2回続けての一騎討ちという形になった。
*2:しかも世間の注目は、秋葉原系某アイドルグループの総選挙の100分の1にも満たないレベルである。
*3:過去の投票に関するエントリーは、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20120210/1329067780、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20120315/1335674620参照。
*4:逆に山岸→宇都宮となった弁護士会も山口県、函館、旭川と3会に上り、同点だった静岡県も宇都宮候補が取る(ただし、宇都宮候補が前回獲得していた大分県は同点に。)、ということで、引き続き錯綜する状況は続いていた。
*5:もちろん、1回目の投票からトーナメント方式で“じゃんけん”を導入する、というのもやぶさかではない。選挙費用も大いに削減され、若い弁護士が電話での投票依頼で時間を浪費する、といったような無駄もなくなるのだから、こんなにハッピーなことはない。