歴史は繰り返す。

とりあえず、今回の参議院選挙も終わった。

7月も下旬に差し掛かっているというのに相変わらずすっきりしない天気。
とはいえ、東京ではそんなに雨も降っていなかったので、投票に行くにはちょうどいい日和*1かなとも思ったのだが、蓋を開ければ記録的な低投票率になったようで、SNS上でも現政権に批判的な人々を中心に憂う声が飛び交っている。

まぁ、自分も今の状況が良いと思っている人間では全くないので気持ちは分かるのだが、元々、参議院選挙は政権選択のための選挙ではないし、そもそも、今回の選挙で与野党逆転できるほど野党側候補者の層が厚かったわけでもない*2

それでいて、選挙の主要な争点が、既に「10%」になることを織り込んで世の中が回っている消費税の話とか、普通の人にはピンとこない憲法改正の話で、加えて、市井のほとんどの人たちは「今目の前に迫っている危機」を何ら実感するような状況ではないのだから、誰もが投票所に足を運びたくなるような盛り上がりを求める方が無理がある、というものだろう。

また、低投票率を憂う人々の中には、「選挙に行かない人が投票所に行けば潮目が変わる」と信じている方も多いようなのだけど、これまでの例で言えば、そういった”浮動層”の票って、”何となく自民党”に流れることも多かったわけで*3「組織票に支えられているように見えて実はもろい(特に都市部)」今の自民党にとっては、低投票率の方がむしろ不利だったりもする*4

今回の結果を見てもそれは如実に現れていて、岩盤のような支持層を持つ公明党や、なぜかいつも選挙戦終盤で下馬評に反する組織力を発揮する日本維新の会議席を伸ばす一方で、自民党は思いのほか苦戦する結果となり、東北は岩手、宮城、秋田、山形の4県で現職が枕を並べて討ち死に。新潟、滋賀、大分といった一人区でも現職議員が落選の憂き目にあった。

一人区で自民党が野党の統一候補に苦戦したのは3年前と同じだが、野党側に現職議員や知名度の高い元職が多かった前回とは異なり、今回はまっさらな新人を立てて現職を撃破したパターンも多かったから、その意味では少し潮目が変わってきた、という見方もできるところである。

あと、複数の候補者を立てた大都市圏でも、自民党が楽な戦いをしているようには全く見えなかった。
6年前に「政権経験政党」への批判票を集約してちょっとしたブームを巻き起こした共産党や、前回の衆院選で躍進した立憲民主党の勢いが、今回それほどでもなかった、ということもあって、北海道でも千葉でも東京でも最終的には擁立した候補者を両方滑り込ませることができたものの、広島選挙区では野党統一候補に漁夫の利でトップ当選させてしまった上に、一時は議員会長まで務めた当選5回の現職重鎮議員を落選させる、という悲劇的な事態に・・・*5

まだ全容は判明していないものの、比例代表の得票も想定されていた以上に伸び悩んでいるように見える。


ということで、結果的に低投票率に泣いた自民党議席を減らし、当面の間は「安定政権」こそ揺るがないものの、この先数年内での改憲発議の可能性はほぼなくなりそうな気配となった。
そしてそれは同時に、野党側もその支持者にも、「引き続き立場を変えずにじっくりと現政権を攻撃しながら、大きな潮目の変わり時が訪れるのを待つ余裕ができた」ということも意味している。

今回の選挙で垣間見えた政権与党側のちょっとした綻びが、どのタイミングで大きな流れにつながるのか(そもそも潮目が変わるタイミングが来るのか)は、今の時点では何とも言えないところではあるのだが、ここ数年使い古された「成長」とか「競争」といったフレーズに辟易している層がかなりのボリュームに達している、ということは、今回の野党連合への底堅い支持と、「れいわ」フィーバーを見れば非常によく分かるわけで、転換点は意外とすぐ近いところにまで来ているんじゃないか、というのが自分の見立て。

そして歴史が再び繰り返されたときに、「2019年の参議院選挙が一つの節目だった」と言われることになっても決して不思議ではないかな、と、何となく思っているところである。

*1:あまり遠出する気分にはなれず、かといって家から出たくなくなるほどの天候でもないので。

*2:特に北陸エリアとか、中国・九州エリア(除く大分、沖縄)では、ほとんどの選挙区で、自民党の現職相手に出口調査の結果を見るまでもなく惨敗しており、これでは与野党逆転など望むべくもない。

*3:もちろん、1993年や2009年のように強烈なムーブメントが起きている時は別だが、今回はとてもじゃないがそういう状況ではなかった。

*4:逆に根強い固定支持層や、「どうしても投票で一票投じたい」支持者が付いている野党の方が相対的に強くなることだってある。今回、数少ない”躍進”を遂げた「れいわ新選組」にしても、投票率が上がっていればよりメディアでの知名度が高い他の政党との比較で埋没した可能性はあったはずだ。

*5:かつての自民党(特に中選挙区時代の衆議院選挙)ではよく見られた光景だし、首相官邸からは半ばスポイルされていた(本来なら、なれたはずの参院議長にもなれなかった)引退間際の議員だったとはいえ、岸田政調会長のお膝元に党本部主導で公認候補を送り込み、結果的に岸田派の現職議員を落選させたのだから、そこで禍根が残らないはずがない。選挙に弱いのは宏池会の伝統で、今回も全国あちこちでその伝統芸が如何なく発揮されたとはいえ、こと広島に関しては「味方にやられた」のは間違いないところなので・・・。