2年前とはちょっと違う1回目の投票結果を見て、嫌な予感はしていたのだが、案の定こうなった。
「日本弁護士連合会(会員約3万2千人)は14日、宇都宮健児会長(65)の任期満了(3月末)に伴う次期会長選挙の再投票を実施した。史上初の再選を目指す宇都宮氏と、元日弁連副会長で東京弁護士会所属の山岸憲司氏(64)の決選投票となったが、両氏とも当選条件を満たさず、候補者公募からやり直す「再選挙」が決まった。再選挙は初めて。」(日本経済新聞2012年3月15日付け朝刊・第38面)
前回の得票状況と比較すると、
山岸候補 7964票(12会)→8558票(14会)
宇都宮候補 6613票(37会)→7486票(37会)
となっており、微妙に得票差は縮まったものの、総得票数と支持単位会数の“ねじれ”を逆転するには至らず、不毛な3回目の投票にもつれ込むことになってしまった*1。
一部では「総得票数で上回っていても、18会確保しなければ当選できない、という当選条件がおかしいのでは?」という声もあるようだが、少なくともこれまでの日弁連会長選挙では、得票数と各単位会の支持を両方集めた候補者が、真の意味での“日弁連の代表”という地位に就いてきたわけで、仮に、今回の選挙だけルール変更して強引に当選者を決めたとしても、日弁連内での「会長」の地位の正統性がどこまで担保されるのか、疑わしいところだろう。
個人的には、大きな路線対立があって、その是非を問う、という趣旨で選挙をするのであれば、多少時間がかかっても、やむを得ない(というか、非民主的な方法で強引に決めるよりは、トコトンやった方がいい)と思っている。
だが、問題なのは、今回のこの2回の選挙が、全く中身のない争いになってしまっている、ということ。
山岸候補が、いくら大都市圏の単位弁護士会で得票を集めている、といっても、それは、大都市圏の方が派閥の意向で動かせる票数が多い、というだけの話で、彼の政策やら何やらが、現職に比べて、真に大都市圏で働く弁護士(登録会員の過半数を占める)のニーズを踏まえたものになっているから、ということでは全くない。
第1回の投票前に、某候補陣営に散々揶揄されたように、再投票に進んだ2候補者の政策等に、特筆すべき違いを見出すことなど到底できないのであって*2、いずれの候補者に投票した人に話を聞いても、「うちの派閥は○○支持なので・・・」とか、「派閥にあれこれ言われるのがむかつくんで・・・」なんて答えしか返ってこないことになる。
自分なんぞは、そもそも、弁護士会の会長のような重要なポジションが、2年ごとにコロコロと変わること自体がナンセンスだ、と思っているので、ボクシングの王座戦と同じで、対立候補に決め手がなくて引き分けに終わるようなら、“前のチャンピオン”がそのまま“王座”を守れば良いではないか・・・*3と言いたいところなのだけど*4、そういう価値観が通じないのがこの世界、ということらしい。
日経紙は、リップサービスも含めて、
「司法制度改革は道半ばで日弁連の果たすべき役割は小さくない。」
なんてことを言ってくれているのだけれど*5、「果たすべき役割」がどれほどのものなのか、疑わしいところは大いにあるだけに、せめて、選挙だけでも外から見て恥ずかしくないような決着を付けていただくよう、願うのみである。
*1:各弁護士会の支持でいえば、前回・尾崎候補が獲得した第二東京は山岸候補に、鳥取県は宇都宮候補に回っているが、それ以上に細かい変化があり(山岸→宇都宮となったのが新潟県、三重、大分、釧路の4会、宇都宮→山岸となったのが山口県、宮崎県、旭川、香川の4会、さらに前回同点→山岸となったのが高知、宇都宮→同点となったのが静岡県)、非常に錯綜した状況である。
*2:というか、たかだか2年間の任期の間にできることなんて所詮限られているし、支持層も本質的にはそんなに大きくは違わないのだから、“違い”をそんなに簡単に出せるはずもない。
*3:自治体の首長だって、1期目で大きな問題が起きなければ通常はすんなり再選されて2期目に突入するものだ。組織のトップ、というのは、本来そういうものだと思う。
*4:現に自分自身、そういう投票行動をしているのだけれど・・・。
*5:もちろん、その後には、「“内輪”の争いは最小限にとどめ、課題に速やかに対処することが求められる。」というシニカルな批評がくっついている(笑)。