いつものように静かに始まり、ラウンドが進むにつれて徐々に盛り上がりを見せつつある(?)第3回のWBC。
初戦のブラジル戦で“あわや・・・”があった時は、これで変な「神話」も終わってくれると良いのになぁ、とも思ったものだが、そこは、世界で数少ないハイレベルなプロリーグを持つ国だけあって、そう簡単には負けない。
結局、2次ラウンドに入っても、台湾を執念で下し、オランダには力の差を見せてコールド勝ち。
過去2回と同じく、米国大陸に渡る頃には、ちょうど選手たちの体も温まってきて本格的な好勝負を演じ、大方の日本人が狂喜乱舞する・・・はずである*1。
いつもなら、所詮「北中米&極東のローカル大会」じゃねーか、と揶揄されがちな大会そのものについても、今回からは、国際大会の再編で、名実ともに「世界最高峰」の大会となったこともあり、これまでよりは、「国際」色が強くなっているのは確かだろう。
欧州大陸の代表チームもいくつか参加しているし、その中から、オランダやイタリアのように、かなりの見せ場を作れるチームも出てきた。その一方で、これまで「ローカル」色をより強いものにしていた韓国は早々と第一ラウンドで敗退し、台湾も二次ラウンドの段階で消えてしまったので、アジアからの勝ち残りは日本だけ。
参加するまでひと悶着あったとはいえ*2、この大会で最後まで勝ち残れれば、日本の「野球」に対する評価も、また一段と高まることだろう。
だが・・・
自分には、過去2大会と同じく、今、日の丸を付けて戦っているNPB混成軍を、日本「代表」と呼ぶことへの違和感が依然として残っている。
どんな球技でも、「日本代表」と銘打たれたチームには、大きな大会に辿り着くまでの「歴史」の積み重ねがある。
サッカーやラグビーであれば「W杯」、バレーボールやバスケであれば「五輪」。、
4年間という長いサイクルの中で、メンバーを入れ替えつつ経験を蓄積し、中心となる選手を固め、戦術を熟成させて、ようやく大舞台に辿り着く・・・
そういうプロセスがあるからこそ、選手それぞれの所属チームとは異なる「日本代表」という存在に独自性が出てくるわけだし、選手の入れ替え等を通じての“ドラマ”も生まれる。そして、それが、「代表」という存在のブランド価値の源泉となっている。
それに引き換え、WBCに出てくる日本代表は、相も変わらず、大会に合わせて結成されただけの即興チーム。
過去のWBCは、前後に「五輪」を挟んでいたりもしたから、それでもまだ“ドラマ”の種はあったのだが、今大会の代表は、文字通り、4年ぶりに出現した“ぽっと出”のチームに過ぎない。
もちろん、国際的な水準に照らしても選手のレベルが際立って高いことや、アマチュアからプロに至るまで脈々と受け継がれている様々な“チームプレーの約束事”を多くの選手が共有していること、そして何より、野球というスポーツが究極的には「個人技」で勝負する競技であること*3から、即興でも試合を重ねるうちに、「ずっと前から同じメンバーでやっているようなチーム」になれてしまうのは事実なのだけど、前の大会からの4年間で、“チームとしてどこがどう変わった”というプロセスがない、というのは、「代表」を名乗るにはやっぱり寂しい*4。
WBCの谷間の国際大会で、アマチュアの選手が出て華々しい活躍を遂げても、その活躍はほとんど報じられることはないし、その選手がその活躍を引っ提げて直後のWBCで活躍する、というシーンもなかなか見ることはできない*5。
将来的に、WBC以外の国際大会の体系が整備されて、「4年に一度」以外の国際舞台が整えられるようになれば、野球の世界でも「代表」チームの在り方が変わってくるのかもしれないし、コップの中の興行で無駄に試合数を増やすくらいなら、シーズンを中断してでも、代表のユニフォームを着た選手たちが世界を相手に戦う機会を増やしてほしい、と思うのだけれど、こと過去のWBCに関して言えば、
「そこまでしなくても勝てる」
という実績を残してしまっていたのが事実だけに、今回も同じような結果になるようだと、結局、「継続性」というのはあまり意識されないまま、進んで行ってしまうのかなぁ、と思ったりもする。
個人的には、せめて監督だけでも、一定期間、継続性をもってやってほしいところなのだけど・・・。
*1:ハワイあたりでは絶不調なのに、ニューヨークが近づくと俄然調子が上がってくる、かつての「ウルトラクイズ」のチャンピオンを彷彿させるような展開(笑)になるのだろう、と今回も勝手に思っている。
*2:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20120905/1347088901参照。
*3:投手と打者の勝負、っていうのは、結局は「1対1」の話に行きつくわけで、コンビネーションと戦術如何で、「1対1」の場面を作らせないことすら可能な他の球技と比べれば、野球の「個人技」性は明らかだろう、と思う。
*4:個人的には、「代表」というより、「オールスター」と言った方がしっくりくる。それを言ったら、アメリカの五輪バスケチームだってそうじゃないか、という突っ込みはありそうだし、杉内投手のように、アマチュア時代から連続して日の丸を背負い続けている選手がいるのも事実だから、今のチームの作り方を全否定するつもりはないのだけれど・・・。
*5:その後プロに転向しても、レギュラーに定着していなければWBCメンバーに選ばれる可能性は低いし、仮に新人時代からプロで活躍してWBCメンバーに選出されたとしても、多くの人がその選手のアマチュア時代の国際舞台での活躍を知らないから、どうしても“継続性”を感じられない(今のメンバーでいえば、摂津投手などは、順調にアマチュア日本代表からプロ日本代表に進んでいるクチだと思うけど、摂津投手のアマチュア時代の活躍を知るファンがどれだけいるか、と言えば、どうにも心もとない)。