今年最後の大一番、有馬記念で、オルフェーヴルが2着以下に8馬身差を付けて圧勝し、引退レースで有終の美を飾った。
過去何度も折り合いを欠いてチグハグな競馬をしたのが嘘のような、落ち着いたレース運びで3コーナーあたりから悠々と好位に進出。そして、4コーナーを回るあたりで、馬なりで楽々先頭に立ち、直線に入ってからは、まさに影をも踏ませぬラストスパート。
いつもなら、過剰演出が耳障りなテレビの実況(CX系)も、この日は、決して過剰と思えないくらいしっくりはまった*1。
まぁ、今年のこのレースに関して言えば、JC2連覇中のジェンティルドンナが早々と回避し、凱旋門賞以来の再戦となるはずだったキズナも、調子が戻らなかったということで最終登録見送り。さらに、自らも有終の美を飾るはずだった古豪エイシンフラッシュが、直前で無念の故障発生、と、“主役”を盛り立てるはずの役者がレース前から次々と消えてしまっていたのは事実で、本来であれば、世代交代を演出しなければならない立場にあるゴールドシップも、今年の秋は絶不調。
ゆえに、メンバー的に明らかに“格落ち”の感があり、そこに池江調教師の細心の仕上げと、この一番に全てを賭けていたであろう池添騎手の渾身の騎乗が加われば、こういう結果になるのは当たり前、と言ってしまえばそれまでだろう。
ただ、“スター”になりきれなかった“惜しい馬”をたくさん見てきた者としては、そういうお膳立てにきっちりと応えて結果を出す、しかも“つまらない順当勝ち”ではなく、派手なレースで自ら幕を引くのが、一流のスターホースの証なんだよなぁ・・・と、しみじみと思わずにはいられない。
なお、今回の勝ちっぷりを見て、引退を惜しむ声も多く聞かれるが、本来であれば4歳秋に凱旋門賞に挑戦した時点で、そのシーズンがラストになっても不思議ではなかったわけで、それでもなお現役を続行し、途中一頓挫しながらも、フォワ賞勝ち、さらに2年連続で凱旋門賞2着、という、素晴らしい戦績を残したオルフェとその関係者に、これ以上を望むのは、酷というほかない。
海外遠征に費やしていた期間が長かった分、本来であれば、“ライバル列伝”を紡げるはずだった、ジェンティルとかゴールドシップといった世代が近い馬たちと、直接対決できる機会が少なかったのは残念なことこの上ないのだが*2、自分は、最後の最後で、ウインバリアシオンとの直接対決が実現したこと、そして、1年5か月の長期休養から空けたばかりのバリアシオンが、その演出に応えて見事にワン・ツーを演じた*3、ということに、ちょっとだけ未来への希望を見た気がした。
一頭でレースをドラマチックに出来る千両役者がターフを去ってしまった以上、来年は、それぞれの歴史を抱えてステップを踏んできた馬同士が、真正面からガチンコでぶつかり合って、レースに自然とドラマ性がもたらされるようなシーズンになることを願うしかない、そして、そのためには、実力のある脇役の存在が欠かせない・・・と思うだけに、バリアシオンには息の長い活躍を期待したいところである。