最高裁が示したファイナルアンサー〜JASRAC審決取消訴訟上告審判決

平成21年2月27日に公取委が排除措置命令を出して以降、独禁法関係者にとっても、知財関係者にとっても、常に注目の的となっていた「JASRAC事件」。

審判に移行した後にまさかの取消審決が出たかと思えば(平成24年6月12日)、その翌年に、JASRACの競争者であるイーライセンスが提起した取消訴訟で、東京高裁が再び審決取消判決を下す(平成25年11月1日)、という二転三転の展開になっていたが、遂に最高裁で一応の最終判断が示された。

「テレビやラジオで使われる楽曲の著作権料をめぐり、日本音楽著作権協会JASRAC)の契約方法が独占禁止法違反にあたるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁は28日、『他業者の参入を妨げている』と指摘し、公正取引委員会に再審理を求めた。」(日本経済新聞2015年4月29日付朝刊・第2面)

いかに最高裁といえど、高裁の裁判官が5名合議の末に出した結論をそう簡単に引っくり返せるとまでは誰も思っていなかったし、これまでもっぱら事実認定とその評価が結論に大きく影響してきた本件が、そもそも最高裁の審理対象事件になるのか、という疑問すらあっただけに、「上告棄却」という結論に違和感はない。

そして、手続の性質上、公取委レベルの審判に「差戻し」となったとはいえ、高裁が、丹念な証拠の検討の末に、「JASRACの行為の排除効果」の存在を認定している本件において、JASRACが再びの命令取消審決を期待するのは、かなり厳しい状況ではないかと思われる*1

ただ、高裁判決が出された時のエントリーにも書いたとおり*2、本件に対して「独禁法違反」という評価を下すことは、ライセンスを受けている放送事業者の立場から見れば、「独占的集中管理のメリットを享受する」ことへの法の介入、言いかえれば“余計なお世話”といえることでもあるわけで、今回の判断が、「ライセンシングの枠組みを構築することで著作物の利用を円滑化する」ことが至上命題となっている著作権の世界において、「効率的な利用」の足を引っ張る方向に作用する可能性も否定できない。

最高裁判決を報じる記事の一角には、「判決を控えて関係事業者が統一ルールを模索」する動きも紹介するコラムも掲載されており、

「各放送局がテレビやラジオで利用した曲について、管理事業者別の割合を算出するなどの仕組みづくり」

等が話し合われていることなどが紹介されているが(同上)、音楽著作物以外の一般的な著作物について、普通の会社が管理事業者ごとに使用するコンテンツの数をカウントし、それによって対価配分を変える、などといった器用なことをするのはなかなか難しい・・・。

本件は本件として、「効率的な利用許諾の枠組み作り」と「公正な競争」とを、うまく両立していくためにはどうすればよいか。
これからいろいろと、知恵を出していく必要があるように思えてならないのである。

*1:記事によると、JASRACは『独禁法違反に当たらないと引き続き主張していく』とコメントしているようであるが、果たして何らかの“奥の手”を用意しているのか、それとも単なるはったりなのかは、神のみぞ知る・・・といったところだろうか。

*2:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20131102/1383589714