“大波乱”が再び教えてくれた魅力。

2015年もあっという間に、ここまで来てしまった、という感じで迎えた有馬記念

「競馬人気自体は回復傾向が強まっているのに、肝心の走っている馬たちの方は今一つインパクトに欠ける」というのが最近の傾向で、それゆえに、今年のグランプリも、自分はいつになく醒めた思いで見ていたのだが、それでも、

「ここ数戦凡走を繰り返しているゴールドシップが、引退レースで目の覚めるようなマクリを見せて勝つ」

とか、

菊花賞有馬記念、というゴールデンルートを辿った3歳馬(キタサンブラックリアファル)が、勢力図を一気に塗り替える活躍を見せる」

とか、

「混戦の時は牝馬で大穴!」*1

といった決着になれば面白いかな・・・と微かに思っていたところではあった。

蓋を開けてみれば、ゴールドシップは、最後までチグハグさを残したまま8着に惜敗*2

そして、3歳馬も牝馬も、あと一歩のところで届かない中、菊花賞菊花賞でも「去年の菊花賞の3着馬、「ゴールド」違いのゴールドアクターが、同じ菊花賞で覇を競ったサウンドオブアースをクビ差制す、という、結果だけ聞いたら、「それ何のレースの話?」という決着に・・・。

馬柱だけ見れば、去年の夏以降6戦5勝、というゴールドアクターの戦績は実に立派なものだし、サウンドオブアースにしても、今年のJCできっちり5着に入っている。
何より、比較的レベルが高かった昨年の菊花賞で2,3着、というメンツだけに、後から見たら、「この組み合わせを何で押さえていなかったの?」ということになるのだろうが、それは結果論。

“大混戦の中上位2頭の馬がちょっとだけ抜け出した”というこの日のレースが後々まで記憶に残るか、と言えば、それもちょっと怪しい*3

ただ、一部の騎手や生産牧場に、勝ち星も賞金も関心も集中しがち、というここ数年の状況を鑑みると、「絶対的な主役不在」という状況ゆえに、決してメジャーとは言えない中堅騎手*4が操る新冠の小規模牧場出身の馬が、クビ一つの差でこの日の主役になれた、というのは、決して悪い話ではなかったはず。

特に、「日高地区の小規模牧場出身」というのは、今年の一つのキーワードで*5、全体としてみればノーザンファーム社台ファームが圧倒的な強さを見せている中で、年末のグランプリを小規模牧場生産馬が制した、ということの意義は、もう少し強調されてよい*6

JRAが「海外レースの馬券購入」にまで踏み出したことで、来年以降は、競馬サークルの関係者だけでなく、ファンも含めたグローバル化の波が競馬界を襲うことは、容易に想像できるところではあるのだけれど、国内で渋く紡がれてきた物語が日の目を見る舞台もどこかに残っていてほしい、と思うのもまた心情なわけで、2016年の競馬界が、より多様性に満ちた世界となることを、今は願うのみである。

*1:ショウナンパンドラの直前回避は残念だったが、中山コースと相性の良いマリアライトと、2〜3歳戦で牡馬と遜色ない戦いを見せていたルージュバック、という今年の牝馬コンビはかなり強力だったと思う。

*2:久々に鞍上に復帰した内田博幸騎手が、“マクリ”にこだわり過ぎたのかな、という印象もあるが、チグハグに見えても勝ってしまうのがゴールドシップ、という馬だっただけに、純粋に馬の力が戻っていなかった、ということなのかもしれない。

*3:おそらく年度代表馬は同じスクリーンヒーロー産駒でもモーリスの方になるだろうし、来年以降、コンスタントな活躍を続けないと、「ゴールドアクター」という名前は競馬の歴史には残りづらいだろうと思う。

*4:吉田隼人騎手は、10代のデビュー当時から兄(吉田豊騎手)よりも上手い、と評判になったくらいの名騎手なのだが、最近は、乗り馬に恵まれず、ローカルを転戦することも多かっただけに、長くコンビを組んでいるこの馬でビッグタイトルを手にした、ということには、大きな意味がある。

*5:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20150607/1433689636参照。

*6:この日に関しては6頭出しのノーザンファームマリアライトの4着が最高で、主役の座を完全に譲っていた。

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